★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(79)

2012年09月05日 | 短編小説「彗星の時」
「・・どういうことですか?」
「ケイン殿は、王宮の操りの間でイオノスⅢ・・天神の力と繋がっていらっしゃいますが、気絶してしまっているようです。操りの間に入れるのはケイン殿以外は私だけです。気を失っているケイン殿を助けられるのは私しかいませんが、この損傷状況では約一時間位で私の全機能は完全停止します。一時間以内に王宮に戻ることは不可能です」
「・・そ・そなたは後1時間しか生きられないということですか?!・・・ということは・・・ケイン様はカール大帝のように操りの間で死んでしまうと?」
「・・・・・」
 シャインは答えなかった。どんなに計算してもケインを救助できる確率は「0」だったのだ。
 ヤーコンはちょっとの間、呆然としていたが、なにかを思いついたように懐から銀の輪の付いた道具を取り出し、軽く振りながら呪文を唱え始めた。
 しばらくして呪文を止めるとシャインに聞いた。
「確か、操りの間に入る時に、ケイン様は何やら光りを浴び、その後見知らぬ女が出てきてケイン様を導いていったように見えましたが、あの光でケイン様本人かどうかを調べたんですか」
「・・はい、あの走査線で対象物をスキャンし判別します。血液など物理的な採取による判断は行いません」
「つまり、姿形で判断している・・いうことですね」
「・・・」
シャインの返事を待たず、ヤーコンは手に持った道具を頭上に持ち上げ再び振り始めた。銀の輪は心に響くような音色をあげた。


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