★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
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義腕の男2(31)

2015年01月11日 | 短編小説「義腕の男2」
 辺りを見てみると、あちらこちらに数人倒れている。周囲に気配を配りながらその内の一人に近づき具合をてみるが、既に事切れていた。首の骨が折れている。
 銃を持った兵士同士の戦いではこんなことは有り得ない。
 なにか強力な力を持つものがいる。何だかわからないが、何か危険なものがすぐ近くに潜んでいる。 
 何だろう。
 と、・・突然、空から人間が降って来た。
 まるで漫画のようだが、廃墟の影から数メートル上空を飛んで、砂埃を上げて目の前に落下した。
 運送会社の制服を着たMr.Bだ。
 落ちた後、「ぐう・・」と呻いてぐったりとなった。
近づいて調べてみると、どうやら気絶しているだけで命に別状は無いようだ。
 その時、後ろを何かが動いた。振り返ってみたがなにもいない。
 次の瞬間、後ろからすごいスピードで気配が迫ってきた。
 咄嗟によけようとしたが間に合わず、強い衝撃に襲われ2メートルほど吹き飛び地面に転がった。
 だが、俺もエージェントの端くれだ。日頃の訓練の成果で、なんとか受身を取り、低い臨戦態勢で身構え、敵の姿を確認すると・・そこには見たこともない動物が立っていた。
 人間のようで、人間ではない。かといって動物のようで動物ではない。
「獣人」という言葉がぴったりくるかも知れない。
 2メートル近い身長で、上半身はヒョウ柄の毛皮で覆われ、下半身は迷彩色のズボンをはいている人間の姿だ。
 顔もヒョウ柄の文様が見えるが、造作はなんとなく人間っぽい。
 初めて見る異様な姿の生き物だが、どこかで出合ったような感じをさせる雰囲気もある。
 だが、軍人としての俺の本能が、危険な相手というアラームをずっと鳴らし続けているくらい、奇怪な相手だ。
 幸いにも、俺の右腕は、既に戦闘モードになっている。白兵戦ならいつでも来いと言う状態だが、あくまで人間が対象であって、こんな化け物が相手ではどこまで通用するのだろうか。もっとも、この右腕の開発者のジャックだったら自分が作った右腕が人間以外の生物にどこまで通用するか興味津々で舌なめずりをするところだ。

義腕の男2(30)

2015年01月04日 | 短編小説「義腕の男2」
 海岸に向かう街道に乗ると、あとは1本道だ。近道は無い。すでに1時間の差がついているのを挽回するのは、いくら高級車とはいえ至難の業だが、やるしかない。
 街道は、砂漠の中の真っ直ぐな道だ。スピードはいくらでも出せそうだが、路面状況が良くない。道路の所々がひび割れ陥没していたり、砂利や砂が散乱していたりと、かなり運転しづらい状況だ。しかし、さすが高級車だ。荒地をものともせず平然と加速していく。 
 感心しながら150km/h近いスピードで、2時間ほど走ると、道路脇に黒い煙が見えてきた。
 なにかが燃えている。
 トラックだ。
 運送会社のいのししマークがある。間違いない。Mr.J達のトラックだ。車体の横には銃撃されたような穴が無数に開いていて、車体全体が紅蓮の炎に包まれている。
 近くには、イスラン軍の装甲車が1台止まっていた。こいつにやられたのだろうか。
 俺は、ちょっと離れたところに車を止め、用心深く近づいていった。
 そこは、昔小さなオアシス村だったのか、廃墟と化した集落があるところだった。
 辺りの気配をうかがいながら集落跡に進んでいくと、道の真ん中に人がうつ伏せに倒れていた。
 迷彩服を着たイスラン兵だ。まるで猛獣にでも襲われたように、有り得ない変な方向に首が曲がっていて頚動脈が切り裂かれ血まみれになって事切れている。