★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

義腕の男2(78)

2017年03月31日 | 短編小説「義腕の男2」
 先般の医務室での戦闘で、新しい脚になった俺にやられた傷は当然まだ治療中だ。命があっただけでも感謝して欲しいものだが、容赦なくぶっ放してきた。
 胸の痛みがだんだん酷くなり、思わずうめき声を上げ身体をよじるとMr.Rは銃を構え直した。
「なんだ、まだ生きてやがる。とどめをさしてやろう、ケンジ、ははぁー、これでやっとゆっくり寝れるぜぇ」
 Mr.Rが引き金に力を込めた瞬間、人間の声とも獣の咆哮とも聞き取れるような甲高い声が響いた。
「うぎぁぁあぁぁぁぁ~」
 突然、部屋の中の壁の陰からなにか白い影が現れ、Mr.Rの銃を叩き落した。
 Mr.Rの顔が、信じられないようなものを見たように強張り恐怖にゆがんだ。
 俺も自分の目が信じられなかった。
 一匹の猿がパワードスーツを着たMr.Rの頭部にしがみつき襲い掛かっている、、、いや、猿ではない。
 薄汚れた白衣を着た博士だ。
 小さな少女のからだをまるで猿のように折り曲げ、赤毛の髪を振り乱しながらMr.Rの唯一生身の部分が露出している頭に張り付き攻撃している。
 その動きは、人間の、ましてや少女のスピードではない。
 野生動物を彷彿とさせる激しい動きだ。
 Mr.Rは、たまらずパワードスーツの腕を伸ばして博士を掴み取ろうとしたが、博士は人間とは思えない動きでその手を搔い潜りMr.Rの頭部を殴り続けている。
「ぐ、ぐおお」
 苦悶の声を上げたMr.Rは包帯でカバーされた傷口を、また攻め立てられ耐え切れなくなったのか、博士を頭にくっつけたまま床に倒れこんだ。
 博士は地面にぶつかる寸前にひらりとMr.Rから飛びのき、俺の傍らに着地し、俺のほうを向いた。
 その顔は、造作は確かにあの少女の博士のものだが、目つきや表情・雰囲気は人間のものではない。なにか得体のしれない野生動物か訓練を積み重ねた特殊部隊員のようだ。
 だが、その表情も一瞬で無くなり、あの知的な美少女の顔に戻ると、俺に駆け寄った。
「大丈夫?」
 そう言いながら俺の胸にある数発の銃痕をひとつひとつ調べ、ふっとため息をついた。
「よかった。肋骨に少しヒビが入っているようだけど、弾は服で止まっているわ。さすがノスリルの戦闘服ね。こんなに薄くてもかなりの防弾機能があるなんて」
 そうか、そうだった、ノスリルから支給された服を着ていたんだった。弾は止まったが衝撃はひどかったなぁ、、と思いつつ、やっと博士が戻ってきた、これでミッションも終了だな、と安堵した瞬間、何かが起きた。

義腕の男2(77)

2017年03月27日 | 短編小説「義腕の男2」
 ヤツの生存を確認した俺は、ニードルガンの残骸のニードルだけを握り締め、注意深くコンテナの奥に進んだ。銃火器がほしいところだが仕方ない。
 白いドアがひとつある。雰囲気的に金属製ではなく何か軽い樹脂製のようだ。空飛ぶコンテナだから軽量化を図っているのだろう。
 他に出入り口らしいものは何もない。コンテナのサイズから考えて、他にスペースは無い。博士はこのドアの中にいる。
 だが、俺の第六感が何かを訴えかけてきた。今まで数多くの危険を潜り抜けてきた警戒心のアラームが頭の中で鳴りだしたのだ。
 その時、ドアの中から女の子の悲鳴が聞こえた。
 咄嗟に、俺はドアノブに右手をかけた、、と同時に乾いた連続音とともに胸部に強烈な衝撃が走り、後ろに吹き飛ばされた。
 息ができない。胸に3箇所ほど燃えるような痛みが広がってる。
 白いドアの方から、狂ったようなけたたましい笑い声が聞こえてきた。
「ひゃ、ひゃ、ひゃ、ひゃ、、やったぜ~~」
 聞き覚えのある声だ。
 痛みに視覚がぼやけながら声のする方を見ると、白いドアの丁度俺の胸の高さ辺りに、横一列に銃跡があった。ドア越しに部屋の中からマシンガンで撃たれたのだ。
 その穴だらけの白いドアがゆっくりと開くと、サブマシンガンを構え興奮で顔を紅潮させた男が立っていた。
Mr.Rだ。
 パワードスーツを着ているせいで他の部分の状態はわからないが、顔中がガーゼやら、絆創膏やらでミイラ男のようになっている。

義腕の男2(76)

2017年03月23日 | 短編小説「義腕の男2」
 確かに、俺が放った手動ニードルガンは、ヤツのバトルスーツにかすりもせずそのまま通り過ぎてしまった。が、次の瞬間、ヤツの背後にスパークの火花が散り、白いバトルスーツは一瞬でどす黒い鉛色に変わった。
「うが、、」
 声にならない悲鳴を発したヤツは、そのまま動かなくなり、硬直したまま倒れこんだ。倒れたショックで曲がった関節部分から白い煙が漏れ出している。
「ふー、やったか・・結構うまくいったようだな」
 俺は土ぼこりで汚れた顔を拭いながら安堵のため息をついた。
 ヤツのバトルスーツには確かに何も効かない、が、繋がってるケーブルは単なるケーブルで無防備になっていたのだ。
 俺はそのケーブル目掛けてニードルを投げ込んだ。金属製のニードルは、見事ケーブルに突き刺さってショートし、無敵のバトルスーツもぶっ壊れたというわけだ。
 倒れた男に近づいてみると、まだ通電しているのか、スーツのあちこちで火花が飛んでその都度痙攣を起こしている。
「このままじゃ死んでしまうな・・」
見殺しにするのも寝覚めが悪い。
仕方なく、俺はヤツの背中に通ながっているケーブルを右手で引き抜いてやった。痙攣が治まりぐったりとしたが頭部前面を覆っているフルフェイスヘルメットのため顔が見えない。生きているのか死んだのか・・
 とりあえず、右手でヘルメットの継ぎ目がある部分をつぶれない程度にぐっと押してみた。
 パカッとカバーがはずれ、ヤツの顔が露出した。色白の優男だ。意外と若い。所々やけどをしている。気絶しているが息はあるようだ。

義腕の男2(75)

2017年03月12日 | 短編小説「義腕の男2」
だが俺の新しい脚は、そのスピードに負けず反応し俺を安全な方向へ逃してくれる。全くこの足は大したものだ。俺の右腕に勝るとも劣らない。
 しかし、白服の男は今度は左腕で同じ動きをし、再び見えない刃が俺に向かってきた。しかもそのスピードが上がってきている。
 俺はさっきよりも余裕が少なくなりつつ、眼に見えない衝撃波を避けた、、と思ったらすでにヤツの右手から新たな衝撃波が発射され、俺が逃げようとした場所に先回りをして襲ってきた。俺は間一髪、ギリギリでなんとかかわす事ができた。だが、かなり焦ったようで、俺の右手の中でさっき壊れたニードルガンがさらにクシャクシャになり中身のニードルが露出していた。もうニードルガンは完全に使えなくなった。もっともこのニードルガンはヤツの白いバトルスーツには全く歯が立たない。そう、ヤツのバトルスーツには。。
 その時、また新たな見えない衝撃波が地面を削りながら近づいてくる。
 俺は、それを地面の上を回転して避けながら右手に残っていたニードルを力いっぱいヤツに投げ込んだ。
 多分、ニードルガンで撃つよりスピードはあっただろう。
 ニードルガンの破片とともに、数本の銀色の筋が白い服の男に向かった。が、ヤツは自分のバトルスーツに絶対の信頼をおいているのか、それともニードルの軌道がずれていて自分には当たらないように見えたためか、防御も避けもせず次の衝撃波を出す作業を続けている。

義腕の男2(74)

2017年03月11日 | 短編小説「義腕の男2」
 白い服の男は、俺に2回もはずされたのがよっぽど気に喰わなかったのかワナワナ震えながら俺に向かって叫んだ。
「きっさま~、、これならどうだ!」
そう言い放つと今度は腕を下ろし胸を張った。
白色の服にまた虹色の模様が浮かぶ。だが、今までと違い、色の流れが一定ではなく、斑な感じで渦巻いている。
 俺の戦闘員としての第六感のアラームが頭の中で一斉に鳴り響いた。
「!ヤバイ!」
しかし、ここは砂漠の中の一本道。隠れる所も何もない。
咄嗟に右腕で頭部を保護し、相手に対して最小の面積になるよう地面に伏せた。
腕の隙間から覗ってみると、今度は黄色の水玉模様のような柄になりその全ての水玉ひとつひとつから白い何かが一斉に噴出した。まるで白いヤマアラシかウニのようだ。
 指から発射された衝撃波と違い、数が覆いため全て避けることはできないが、地面に伏せて表面積を小さくしたことと、頑丈な右腕のおかげで、数発はかすったものの致命的な打撃は免れた。分散した分、威力も薄まったようだった。
 とはいえ、このままでは、埒が明かない。
 俺は低い戦闘態勢の姿勢まで身体を持ち上げ、次の攻撃に備えた。
 平然と立ち上がった俺を見た白い服の男は、表情がヘルメットで見えないが、明らかに歯軋りをして悔しがっている。
 「エエイ!これならどうだ」
そう叫びながら、白服の男は右腕を下から上へ、丁度アンダースローでボールを投げるような動作をした。すると、その腕の動きの線上の地面が目に見えない何かで削られながら俺の方に近づいてきた。それもかなりのスピードだ。

義腕の男2(73)

2017年03月04日 | 短編小説「義腕の男2」
 咄嗟に俺の新しい足が反応し、左側に飛びのいた。これでも戦闘員の端くれ、ある程度の修羅場も潜り抜けてきた若干の自負もある。間一髪で衝撃波の直撃を避け道路の上で2回転し受身をとった。その拍子に右手の中で何かを握りつぶした感覚が伝わった。
 チラリと右手を見ると、人間越えの握力がカード型ニードルガンを紙のようにクシャクシャしてしまい銀色のニードルが露出していた。
(仕方ない、)とりあえず右手はそのままにして、白い男の反応を覗った。
 白い服の男は、俺が衝撃波を避けたことが信じられないらしく指先で元俺がいたところを指差したまま固まっている。
「ばかな、ほぼ光速に近いソニックビームを除けるとは・・あの獣人といい・・人間の反応速度では不可能だ」
 白い服の男はそう言いながら、再び俺のほうを指差した。
 Mr.Bが言うように充電時間など全く無く、虹色の模様がすぐに現れ出した。
 俺は、地面に低く構え次の衝撃波が来るのに備えた。
 白い服の男は、フルフェイス型のヘルメットを被っているため表情は読み取れないが、俺がヤツの攻撃をあっさり避けたせいで随分動揺しているように見える。
 模様が指先に集中するのを見計らって、俺はクリス博士にもらった最新の左脚で地面を蹴った。
 またしても空間を切り裂く轟音は空振りに終わり、俺が元いた場所に大穴を穿っただけだった。
 博士がつけてくれた新しい足はともかく、俺の兵士として敵の先を読む感覚も捨てたものじゃない。文字通り紙一重だが、敵の新兵器を避けることができた。