★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(81)

2012年10月17日 | 短編小説「彗星の時」
 銀の輪の麗音が更に不可思議な響きに変わった頃、シャインの身体に変化が起きていた。
 薄暗くなりつつある薄暮のなかで、シャインの身体が薄ぼんやりと光り出した。ヤーコンが額に汗をかきながらさらに呪文を唱え続けると、ぼんやりと光っているシャインの身体が二重に振れ出し、するっと抜けるようにシャインと同じ姿のものがシャインの頭上に浮かび上がった。シアークの町に入る時に使った影法師の覇道にも似ているが、霊魂が関わる根本的な部分で大きく違う覇道だった。
 ヤーコンは、シャインの魂が分離するのを確認すると、呪文の種類を変え、手に持った銀の道具を大きく振りかざした。浮かび上がったシャインの霊魂は、その手の動きに呼応するかのように大きく頷くと、ものすごいスピードで王宮の方向に飛びだし、あっという間に視界から消え去った。後に残ったシャインは、光るのをやめ地面に倒れ伏し動かなくなっていた。
 それでもヤーコンは、銀の輪を振るのを止めず、更に違う呪文を発し始めた。しばらくの間、銀の輪の音と呪文が続いていたが、突然ぱったりと止むと、ヤーコンは地面に倒れこんだ。ヤーコンの身体がシャインと同じようにぼんやりと光っている。すると、ヤーコンの身体の上にもう一人のヤーコンが浮かび上がった。
「・・どうなるか、見届けねばなるまい・・非常に興味深い・・」
浮き上がったヤーコンの霊魂は、そう言うとシャインが飛んでいった方向に飛び始めた。


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