「覇道・・」
ヤーコンは、振りかざしていた杖を静かに下ろした。その動きに呼応するように、雨脚はたちまち止まり静かになった。
しかし、ヤーコンは呪文を唱えることをやめず、再び杖を頭上に掲げ大きな気合とともに振り下ろした。
「カーッ」
杖の動きに合わせ、まだ上空を覆っている黒い雨雲の中に白い稲光がピカッと光った次の瞬間、ものすごい爆音とともに、50mほど離れた場所にある岩が白い光とともに砕け散った。雷が落ちたのだ。落雷がまともに当たった岩は、もうもうと地煙りを上げている。
その生けるものなどないはずの土煙の中に、人影が浮かんできた。フードを目深に被り杖を持ったその風貌は、ヤーコンの格好に似ているが、全体的なデザインが根本的に違うように見える。土煙の中から一歩踏み出したその男は、ヤーコンに向かって話しかけてきた。
「また腕を上げたのう、ヤーコン導師」
ヤーコンは杖を降ろし、近づいてくる魔導師を見つめ返した。
「何を言われるサルサ導師。土くれの冥府兵士操術を使い、覇道82番の落雷の術をまともに受けて無傷でいられるなど、導師こそ人間を超えられましたかな」
「ふっ。何をとぼけたことを、冥府兵士操術など我が『地の国』の鬼道68番程度のもの、貴殿の雷術には足元にも及びませぬ。肝を冷やしましたぞ、危うく命を落とすところであった」
サルサ導師と呼ばれた男は、深いフードの奥から響くような低音で受け答えた。
ヤーコンは、振りかざしていた杖を静かに下ろした。その動きに呼応するように、雨脚はたちまち止まり静かになった。
しかし、ヤーコンは呪文を唱えることをやめず、再び杖を頭上に掲げ大きな気合とともに振り下ろした。
「カーッ」
杖の動きに合わせ、まだ上空を覆っている黒い雨雲の中に白い稲光がピカッと光った次の瞬間、ものすごい爆音とともに、50mほど離れた場所にある岩が白い光とともに砕け散った。雷が落ちたのだ。落雷がまともに当たった岩は、もうもうと地煙りを上げている。
その生けるものなどないはずの土煙の中に、人影が浮かんできた。フードを目深に被り杖を持ったその風貌は、ヤーコンの格好に似ているが、全体的なデザインが根本的に違うように見える。土煙の中から一歩踏み出したその男は、ヤーコンに向かって話しかけてきた。
「また腕を上げたのう、ヤーコン導師」
ヤーコンは杖を降ろし、近づいてくる魔導師を見つめ返した。
「何を言われるサルサ導師。土くれの冥府兵士操術を使い、覇道82番の落雷の術をまともに受けて無傷でいられるなど、導師こそ人間を超えられましたかな」
「ふっ。何をとぼけたことを、冥府兵士操術など我が『地の国』の鬼道68番程度のもの、貴殿の雷術には足元にも及びませぬ。肝を冷やしましたぞ、危うく命を落とすところであった」
サルサ導師と呼ばれた男は、深いフードの奥から響くような低音で受け答えた。