★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
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移民船ブルードリーム(24)了

2010年10月05日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
 その時、部屋の入り口のほうから声が聞こえた。
「マツイにはかわいそうだったが、遺族には保証金もでるし、英雄になったマツイの娘は大金がかかる手術も受けられる。我々も、違法企業献金の証人がいなくなってバンバンザイというところだな」
「キャプテンユーリ、いらしてたんですか」
 カトウは、突然訪れたユーリ艦長に驚くことも無く、話を続けた。
「通話記録を消去して、この作戦は終了です。我々は次の中継ステーションでこの装置を持って下艦します。降りるまでよろしくお願いします。」
 カトウは、口元に薄笑いを浮かべて右手を差し出し握手を求めた。
「ああ、お疲れさん。中継ステーションまではまだ3年もあるからな。何かあったらこちらこそよろしく頼むよ。それとも、3年間コールドスリープでタイムスリップするかい?ボックスの予備機、2個位はあるよ」
 カトウと握手しながら、ユーリ艦長が聞いた。
「いやあ、寝たままあの世行きはいやですから、3年間働かせていただきますよ」
 カトウは、同僚のジョンに目配せしながら言った。
 ジョンは、片方の眉毛を少し上げて、口をへの字にし窓から漆黒の宇宙空間を見つめてつぶやいた。
「・・・宇宙だろうが、地上だろうが人間やることは一緒だ・・罪深いものだな・・」

移民船ブルードリーム(23)

2010年10月03日 | 短編小説「移民船ブルードリーム」
『(ザッ・・どうした?もう通信はしないはずだ・・ザッ・・)
 どういうことだ、5個全部壊れていたぞ!5人も死んだぞ。殺るのは8番だけじゃなかったのか!。
(ザッ・・そうか、・・済んでしまったことは仕方あるまい。・・ザッ・・もう一度現場に戻って状況を確認してくるんだ・・ザッ・・)
 ちくしょう、、、なんということを、、俺は、、』
 死者の秘密の声を聞いたジョンは、生気を吸い取られたようなかすれた声で「以上で全部だ」と言った。
 少し白っぽい顔色になったカトウは、表情を全く変えずに言った。
「このあとマツイは、現場で2度目の爆発に巻き込まれた。・・予定通りだな。」