★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(79)

2017年04月16日 | 短編小説「義腕の男2」
 美しい少女の姿が一瞬で俺の前から消えた。
 同時に右方向から軽くて鈍い音が聞こえた。二度と聞きたくない生身の人間が固いものにぶつかる音だ。
 恐る恐る音がした方向を見ると、つい今まで目の前にいて微笑んでいた少女が、3m程離れた壁に叩きつけられ、壊れたマネキン人形のように地面に転がっていた。
 何が起きたのか理解できないでいる俺の耳に、薄気味悪い笑い声が聞こえてきた。
 声の方を見ると、そこには体のあちこちから白い煙を漂わせながら、白い服の男が例の衝撃波を出した後の格好で、へらへら笑いながら立っていた。
「手に入らないものは抹殺だぁ」
 完全に破壊したと思っていたヤツのバトルスーツがまだ機能していたとは・・。
 とどめを刺しておくべきだった。
 俺は自分の詰めの甘さをこれほど呪ったことはない。
 頭にカーッと血が上っていく。
 どういう感覚なのか。全身にある理性で制御するスイッチが一斉に切れて、力が解放されていくイメージが体中を駆け巡っていった。
 それに合わせ、博士につけてもらった左足が「ドクン」と一回脈打った。
 何か大きなものがが俺の中で切れた。それとも繋がったのか。
 いずれ、そこから先はよく覚えていない。
 断片的に、白服の男の恐怖にひきつる顔や、義腕である右腕がフルパワーを解放した感覚、駆けつけてきたMr.Bの驚愕した姿などがぼんやりと残っているが、時間的にはつじつまが全く合わない。
 空白の時間帯に、俺は何をしたのだろうか。