★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(7)

2013年10月19日 | 短編小説「義腕の男2」
 俺は、右腕を戦闘モードにするコマンドを手首にある小型キーに入力した。
 俺の右腕は義腕だ。
 本物の腕は、数年前の訓練の最中、誤爆発とともに吹き飛んだ。俺が所属する連邦軍の特殊工作部隊は訓練が厳しいことで有名である。訓練中に命を落としたやつもいる。俺の右腕も、演習場のどこかに埋もれているはずだ。今頃は雑草の肥料になっているだろう。
 もっとも、現代の科学技術は金さえ積めば本物以上の身体を作ってくれる。
 俺の右腕もそうだ。家一軒建つくらいの値段らしいが、これはもう義腕ではない。なじみの技術屋が言うには、カテゴリー的には兵器の部類になるらしい。
 確かに、今俺が生きていられるのは、間違いなくこの義腕のおかげだ。これがなければ、多分2回目あたりのミッションで死んでいる。
 兵器といっても、腕から銃弾が飛び出たり炎を吹く訳ではない。
 市販品との決定的な違いは、基本性能だ。外見上は、本物の腕と全く変わらないし、動きも脳神経と接続していることから生身と変わらない。その辺りは市販品と大差ないが、まず耐久性が高いのだ。最新の複合素材でできているため、よほどのことが無い限り破損しない。
 さらに、根本的な力が違う。
 反応速度が常人の約4倍、パワーが約100倍まで引き出すことができる。
 有体に言えば、右腕に頑丈なパワーショベルが付いているようなものだ。
 当然、日常生活では無用なパワーのため、通常モードと戦闘モードの2種類で使い分けている。
 その右腕がコマンドを受け付けて戦闘モードになった。低い唸りが右肩から全身に伝わってくる。今までの経験からとても安心できる感覚だ。

 その安心感を味わいながら外部モニターを見ていると、次のミサイルの軌道が判った。こちらに直接向かってきてはいないようだ。2発とも列車が進んでいるさらに先に向かっている。
 おっ、着弾した。
 オレンジ色の炎とともに、2本のレールがはじけている。げっ、列車本体ではなく線路を狙ったのだ。