★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

義腕の男2(87)

2017年08月20日 | 短編小説「義腕の男2」
その姿を見てMr.Bがつぶやいた。
「これは・・情報部データベースで見たことがある・・、ザビ共和国が開発中の兵器だ。確か、脳波直結型遠隔操作ロボット・・」
そのロボットは、目の前の異様な物体に見とれていた俺たちに無造作に近づいてきて、ゆっくりと一人づつ品定めするように覗き込んだ。
 よく見ると、頭部と思われる部位の奥に、赤いLEDライトのような小さな点が2個見える。まるで眼のようだ。
 博士の前まで来ると、そこで一旦止まり、首をかしげるようにすると、いきなり手を伸ばし博士を掴もうとした。
だが、間髪を入れず、隣に座っているMR.Jがそのロボットの動きより早く腕を回し、ロボットを殴りつけた。
 獣人のパワーとスピードで殴られたのだからモロ吹っ飛ばされると思ったが、銀色のロボットは少々ぐらついた程度で持ちこたえ、ゆっくりとMR.Jを見据え博士に伸ばした手を獣人の方に方向を変えた。
 獣人の野生の本能が目覚めたのか、MR.Jは銀色のロボットを見据えたままシートベルトをゆっくり外すと、低い戦闘態勢に構えた。
 本気だ。
 銀色のロボットは、そんなMr.Jの思惑など全く関係なく、何かにはじかれたようにすごいスピードでMr.Jに襲い掛かった。
 常人なら自分の身に何が起こったのか判らないうちに打ちのめされてしまうような速さだったが、獣人は滑りやすそうなメタルのロボットとがっちり組合い、明らかに互角に渡り合っている。
 だが、ロボットのパワーは獣人をも凌ぐのか、Mr.Jは徐々に押され始めている。
 いきなり均衡が破れた。
 見かけが小さい銀色のロボットが、図体のでかいMr.Jを軽々と振り回し、反対側の壁に投げ飛ばした。
当然、飛行中の輸送機にとっては狭い機体の中でMr.Jが壁面に激突したショックは大きく、乱気流に突入したように大きく揺れる。
パイロットはたまったものではない。
「今度はなんだ?何が起きている?」
機体の維持に精いっぱいの機長は怒鳴りながらもなんとか飛行を維持している。

義腕の男2(86)

2017年08月17日 | 短編小説「義腕の男2」
 離陸してから数分しか経っていないが、もう雲のなかにいるとは、かなりのスピードで高度を上げているのだろう。このまま飛行できれば1時間もしないうちにノスリルの領空内に入ることができる。
 そうなれば、さすがのザビ共和国もあきらめるはずだ。
 ちょっと安心して、何気なく小さい窓から外を見ていると、一瞬何かの影が通ったのが見えた。錯覚か?
そう思った刹那、「ごん」という衝撃が響いたか思うと、俺たちが入ってきた後部ハッチがミシミシと鳴り始めた。
「なんだ?何が起こっている?」
 Mr.Bがこう叫ぶと、その言葉に反応するように、飛行中は絶対開くはずのないハッチがギリギリと少しずつ開き始めた。乗員全員があっけにとられて見ていると、ハッチはいきなりガバッと開き、そこから機内の空気が物凄い勢いで吸い出され、機内は嵐のような状態になった。
 機内の人間は、空気の奔流のなか、シートベルトにしがみつき飛ばされないようもがいている。パイロットも例外ではない。
「うおお、なんだ、どうしたんだ?」
 操縦席のパイロットが叫んだ。突然のアクシデントに飛行を維持するのに精一杯のようだ。
 やがて、突然嵐が止まった。
 いつの間にかハッチが閉じられていた。
 が、目の前には、見たことのない物体が立っている。
 一見、人型ロボットのようだが、大きさは子供位か。普通のロボットと違うのは、全身が銀色のメタリック製でのっぺりとしており、頭部はあるものの顔もない。形も人間とは違い、三角形を基調とした部品を繋げて人の形を作っているような感じだ。
 こいつが、飛行中のジェット機のハッチをこじ開けて入ってきたというのか?

義腕の男2(85)

2017年08月08日 | 短編小説「義腕の男2」
 間もなくその迷彩色の機体が頭上に近づくと、翼下にあるジェットエンジンが器用に向きを変え、滑らかに水平移動から垂直移動に移りそのままヘリポートに着床した。
 「ほう、なかなかいい腕のパイロットだな」
 Mr.Bが感心していると、機体の後部のハッチが下に開いて搬入口が開き、中からパイロットヘルメットを被った男が顔を出し、早く乗り込むよう合図をした。
 エンジン出力を最低まで絞っているのだろうが、かなりの風が渦巻く中を4人揃ってオリバー20に乗り込んだ。
 中は輸送機なのに何も積んでいないせいか見た目よりかなり広い。
 4人は足早に機内の搭乗員シートに座り、シートベルトを締めた。
 搭乗員シートといっても、機体の壁面に沿って取り付けられたアルミパイプ製の簡易型ベンチのようなもので、座り心地など全く無視しており、単に飛行中に動かないように人間を固定しておくためだけのものだ。
 運転席も見えるところにあり、パイロットがどんな操縦をしているのかまで丸見えになっている。さっき搬出口から顔を出したのはこのパイロットだ。
 我々がベルトをロックすると、待ちかねたようにパイロットがこちらを振り向いて親指を挙げた。
 発信の合図だ。
 「キーーンーー」
さっきまで絞っていたジェットエンジンが轟音をあげ始めると同時に、乗り込んできた後部ハッチが閉まり、機体が浮き始めた。
 着陸した時と同じように、滑らかに上昇しスーッと水平飛行に移行していく。やはり一流のパイロットだ。
 大抵の輸送機は軽量化のため防音設備がなく、エンジン音がうるさくて耳栓をしたりするものだが、さすが最新型。
 機内は意外と静かでちょっと大きな声を出せば会話もできる、しかし窓はほとんどない。幸い、俺が座ったちょうど後頭部のあたりに、点検口のような小さな薄汚れた窓があり、かろうじて外の景色が覗けたが、雲の中に入ったせいか、薄いグレー一色の世界だ。