★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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パーフェクトシティ(13)

2023年10月05日 | 短編小説「パーフェクトシティ」

「ところで、今夜は何件だ?」
 さりげなく話題を変えた。
「今のところ5件ですね」
 命令書を見ながらケンジが言った。
「ということは、帰宅は3時ってとこかな」
「そうですね~」
 まあ仕方ない、とあきらめていると「全員注目!」と号令が聞こえてきた。
「これより、隊長よりご挨拶があります。注目願います」
 いつの間にか、部屋の隅に小さな段が置いてありその上に警備隊長が立っていた。
「皆さん、深夜勤務ご苦労様。今日は、年に1回の大晦日、大聖堂が開く日です。釈迦に説法ではあると思いますが、今日の皆さんの任務は、何らかの理由で大聖堂に行けなかった方々を直接訪問し、大聖堂と同じように救済することです。
 大聖堂に行くことができなかった方々は、病気やケガまたは何らかのトラブルに巻き込まれている可能性が高いですから、ケースに応じて的確な対応をお願いします。
 また、絶対忘れてはいけないのは、反体制勢力、反乱軍の存在です。過去2回の武力衝突はこの日に起こっています。ここ20年、特に大きい紛争は発生していませんが、反体制勢力が消滅した訳ではありません。
 日頃から警備任務にあたっている警備隊員だからこそこの業務を速やかに完遂できると期待しております。パーフェクトシティの皆さんが2355年を無事繰り返すことができるよう頑張ってください」
 毎年、同じようなセリフしか言われないが、他に言うこともないのだろう。



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