★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(65)

2017年01月02日 | 短編小説「義腕の男2」
 画面の片隅に「AUTO DRIVE ON」の文字が浮かぶ。
 アルミバンの運転を自動操縦に切り替えたようだ。
 その後、Mr.Jは、ハンドルからすっかり手を放し傍らのパネル操作に集中し始め、間も無く「よし」と呟きながら俺の方を見た。
その間、コンテナの横に張り出した銀色の長球体は、青色の輝きを増している。
よく見ると、コンテナと荷台の間に少し隙間ができている。かなり重いはずのコンテナが浮かび始めている。
「今から特殊な2種類の光線があのトレーラーを照らす」
そう言いながらMr.Jは手元のスイッチを押した。
 右側の方から赤色の光がトレーラーを照らした。
「すると、その2種類の光が交差する部分の気体がゲル状に変化する」
「ゲル状?」
「そうだ、つまり光りが照ったトレーラの周りの空気が、ゲル状に固まり、飛行を阻止することができる」
 Mr,Jはもう一つのスイッチを押した。
 今度は左側から青色の光が照射された。
 Mr.Jはコンテナが赤と青の光りに照らされたのを確認すると、俺の方に小さな備品を投げてよこした。
 耳につけるタイプの小型通信機だ。
「そして、俺たちがその隙にアレに乗り移り博士を救出する・・というわけ・・だ・・」
 2色の光が照射されたトレーラーは、赤と青の混じった紫色に染まっている。四隅に張り出した球体は相変わらず青く輝いているが、コンテナと荷台の隙間は広がっていない。Mr.Jが言ったように、コンテナの飛行を押さえつけているようだ。
 結構地味で、素人の俺にはあまり面白みが感じられないが、両国の最先端技術が競い合っているのだろう。見る人が見ればものすごく興味深い対決なのかもしれない。
 Mr.Jは言い終わらないうちに、いつの間にか空いた運転席のサンルーフからすべるように外に身を乗り出した。
 さすが獣人。動きが異様になめらかで力強い。
 唖然として見上げた俺に、Mr.Jは人差し指で手招きをし(一緒に来い)と合図を送ってくる。
 なるほど、俺の出番とはそういうことか。
 獣人と一緒にトレーラーに乗り移り、博士を救出する荒業ができるのは、博士から新しい脚をもらった俺ぐらいのものだ。
 妙に納得した俺は、渡された無線機を耳に装着するとMr.Jに続きサンルーフから車の屋根によじ登った。