★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(78)

2012年08月05日 | 短編小説「彗星の時」
 ギガベースは、砂埃を上げながら『レマ湖』へ向かう荒野を進んでいる。
 その姿を、ヤーコンとシャインは近くの丘の上から見つめていた。
「あの速度ですと、1時間程でレマ湖に着きますな」
 ヤーコンがシャインの隣に立ったまま言った。シャインは、胸に開いた穴を手で押さえ地面に座ってギガベースを眺めていた。
 そう言っている間に、ギガベースの複数の出入り口から人がバラバラと出てきた。かなりのスピードで走っているにも関わらず、皆、飛び降りて地面に転がっている。
「おぉ~、皆出てきますな~、あぁ、あんな転び方じゃ怪我をするぞ。まあ、ケイン様にレマ湖に沈めるぞと言われたら、仕方ありませんな」
 二人は、ギガベースの機関室で「イオノスⅢ」からの遠隔操作モード設定に切り替え、操作盤のモニターにケインが映ったのを確認してから、なんとか脱出に成功していた。
「しかし、あの「砦」は、もうケイン様の手の内に入ったのですから、なにもレマ湖に沈めなくても良いのではないですか」
 シャインは、口端から流れ出る液体をそのままにかすれ声で答えた。
「ギガベースの本当の力はあんなものじゃありません。あれが装備している兵器がフル稼働すれば、天の国はおろかこの大陸が全て吹き飛ぶほどの力があります。天の国も含め今の時代のどの国でも使いこなすことはできません。あってはならない超古代の禍物なのです」
「ふむ、確かにあの砦も戦鉄牛も、この世のものとは思えないようなものですからな」
 シャインはヤーコンを見上げると微かに微笑んだが、次の瞬間、遠くを見つめるような目つきになり呟いた。
「・・ケイン殿・・」
「どうされた。シャイン殿、ケイン様になにかあったのですか?」
 シャインは、しばらくの間ピクリともせず固まったようになり何か呟いていたが、やがてヤーコンの方を見た。
「ケイン殿と連絡がつきません。イオノスⅢとの接続は維持されているようですが、返答がありません」


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