★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(27)

2014年09月28日 | 短編小説「義腕の男2」
 俺は、日ごろのヨガで鍛えた第六感を研ぎ澄ませ、人通りがもっとも少なくなる頃合を見計らって布からゆっくりと顔を出した。
 結構時間も経っているためか、撃たれる前よりかなり人は減っている。俺は、カーテンの下で、もぞもぞと動き、博士の遺体の下から這い出し、タイミングを見てなんとか近くの部屋に移動した。
 そこは所員のロッカールームだった。
 その部屋も泥棒が入ったかのようにロッカーの扉が開け放しにされ、置き去りにされた物が、あちこちに散乱している。俺は、その中から白衣を見つけ出し、血で汚れたイスラン兵士の服を着替え、研究所員になりすました。
 空爆が始まるまでもう二時間を切った。ユーリ軍のピンポイント攻撃は、世界一の精度を誇るが、やはり30分位前にはビルから退去したい。
 俺は、怪しまれないよう手近にある空き箱を持ち、いかにも重い荷物を持ったように演技をしながら、廊下に出て非常階段を登った。まだ意外と人通りが多い。
 1階近くまで登った時だった。
 階段ホールに銃声と悲鳴が響いた。
 恐る恐るフロアを覗いてみると、銃撃戦が繰り広げられている。撃ち合っているのはイスラン兵の格好をした者同士だ。
 どうやら、空爆のドサクサ紛れに何かしようとしているのは、俺たちだけじゃないらしい。