★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(77)

2012年08月04日 | 短編小説「彗星の時」
 こめかみに指を当てて映像を見ていたガーゼル王は、無敵の戦鉄牛が次々と倒れていく画像を見つめながら椅子からゆっくり立ち上がり、ケインの映像に視線を移して言った。
「天神の力を手に入れたということは、カール大帝以来の大帝の誕生ということですかな?
ケイン殿?」
 やはり、ケインには聞こえているのであろう。ケインの声が司令室中に響いた。
「そういうことになります。今、再び天の国に大帝が誕生しました。私はケイン大帝です」
「・・そうですか。そういうことであれば、新しき王の誕生に敬意を表して、我々は引き上げましょう。お祝いは後ほどお送りいたします。ジーザ王子よ、全軍に指令を廻せ。祖国へ帰還せよと」
ジーザ王子は、握ったこぶしを震わせながら頷いた。
「・・はっ、判りました。全軍へ伝えます・・」
「我々も、この砦から退去する。皆、ご苦労であった。撤収じゃ!」
そう言うと、ガーゼル王は朱色のマントをひるがえして、振り向きもせず、司令室から出て行った。



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