★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
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義腕の男2(41)

2015年05月10日 | 短編小説「義腕の男2」
「君は・・その・・なぜ博士と呼ばれているんだ?・・君がクリス博士なのか?」
 少女は俺の脚の具合と、顔色を眺めながら言った。
「どうやら、加速剤の副作用も抜けてきたみたいね。・・そうよ。私がクリスよ」
 思っていた通りの答えだったが、更なる疑問がわいてくる。
「しかし、クリス博士は42歳のはず。それにNビルで、君に撃たれて死んだんじゃないのか。おかげで俺も危うく死ぬところだった」
 少女はその言葉を聴いてふふっと笑い、あどけない笑顔を見せたが、その眼は不気味な深暗の輝きを放っていた。
「よくできてたでしょ。あのアバターは・・。本人の私でさえ時々どっちが本物か判んなくなっちゃう時があったんだから。それに、ごめんなさいね。ちょうどあなたがアレの影にいたのよね。まさか銃弾が貫通するとは思わなかったわ」
「?アバター?そんなばかな。体温もあったし血も流してた。あれが人間じゃないなんて信じられない!」
「そうでしょ。あれは、半有機型アンドロイドと言って、ノスリルの生命工学の最先端技術なのよ。かなりお高いのよね。あの時、あの場を切り抜けるため、咄嗟に撃っちゃったけど、もったいないことをしたかな~」
「半有機アンドロイド・・」
「そう、私はイスランでアレも研究開発をさせられていたのよ。プロトタイプの開発までは辿りついていたんだけど・・今回の空爆でまた逆戻りね」
「もうひとつ・・・君の・・その姿は一体・・」
俺は、話しながら足の傷の痛みが増していることを感じていた。
「ああ、これね。私の本業は生命科学、特にアンチエイジング分野なのよ。その成果ってとこ」
「アンチエイジング・・・・若返り・・か」
「そう、自分を実験台に試してるんだけど、ちょっとやりすぎちゃったのよねぇ、まあそのうち元に戻るよう調整しなくちゃ」
「・・・・」
 そんな簡単に若返ることができるのか、いや、目の前にいる女の子は本当の天才なのだという思いにグウの音も出なくなった。確かにノスリルが他国に支援を求めてでも奪還したい人物だ。