★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
SF、ミステリーから現代物まで何でも書いてます。
良かったら感想をお聞かせください。

義腕の男2(82)

2017年05月30日 | 短編小説「義腕の男2」
 とりあえず、今までの謎を解明するため博士に質問した。
「いったい、今回のミッションはどういう理由でザビ国まで絡んでいるんだ?」
「そうか。あなたはユーリ連邦からの助っ人だからあまり知らされていなかったのね。・・いいわ。いきさつを教えてあげる」
 見かけはかわいい少女なのだが、人生の積み重ねは自然と物腰にでるのだろう、まるでかなりの年上のように静かに言うとにっこりと微笑んだ。
 するとタイミングを見計らったように後ろのカーテンが少し開き、Mr.BとMr.Jが入ってきた。
Mr.Bは軍服を着ていて元々の軍人らしさを醸し出しているが、Mr.Jは、患者服のうえ包帯や絆創膏だらけで結構悲惨な見かけだ.。
 それでも、寝ていなくても良いらしい。さすが獣人。
「よう、大丈夫か?」
Mr.Bが陽気に話しかけてきた。
博士が振り向いて代わりに答えてくれた。
「ああ、今、目が覚めたところよ。これから彼に今回のいきさつを説明するけどいいわよね」
「えっ・・まあ、ここまで関わったんだからいいでしょう」


義腕の男2(81)

2017年05月14日 | 短編小説「義腕の男2」
 完全に意識が戻ったのはまた別の部屋だった。
 白い天井だ。
 よく見るとところどころにシミが見える。
 周りを見てみると、いかにも病室といった感じの白い壁と白いカーテンがある。それに足元には少女が一人・・
「!」
「どう?気分はそんなに悪くはないでしょ?」
 真新しい白衣を着たその少女は、書類をはさんだバインダーを持ち、手慣れた女医のように俺の左腕をとって脈を計り始めた。
「・・ん、バイタルも正常。右腕も左足も今のところ異常なさそうね。よかったわ」
「博士、、大丈夫なのか?君は確か衝撃波に吹き飛ばされて、、そのあと・・」
 博士は、バインダーの紙に何かを書き込みながら、
「ええ、あいつの衝撃波はもう威力がなかったの。不意撃ちだったから壁まで飛ばされたけど怪我はしなかったわ。それより、、その後のことは覚えてないの?」
「え、、、その後は、、どこかで少し目が覚めたような・・」
「ふーん、、あの時の記憶はない、、ということね。なるほど、確かにそうかもしれないわね」
 博士は、意味深なことを言いながら、バインダーに書き込んでいる。
「ここは、、ノスリルなのか?」
「いいえ、ここはノスリルの同盟国ギルビー諸島の病院よ。ここまで来ればもう大丈夫よ」
 いつの間にかイスランを脱出している。
 また謎が増えた。

義腕の男2(80)

2017年05月11日 | 短編小説「義腕の男2」
 次に意識が戻ったのは、暗く湿っぽい部屋のベッドの上だった。
 ゴウン・・ゴウン・・と腹に響くような低音が部屋を揺すっていた。
 ほのかな潮のにおいがする。船・・いや、潜水艦だ。脱出プランに載っていたようにノスリルの潜水艦に辿りついたようだ。
 自分のいる場所はなんとか判別できたが、まだ意識は混濁しているし、何より全身が異様にだるかった。
「軍医、患者が眼を覚ましました」
 俺のベッドのすぐそばに立っている若い乗組員らしい男が、俺の足元付近にいる男に話しかけた。
 部屋の中には、俺とその二人しかいないようだ。
「ふむ、今起きられても手の打ちようがない。到着までまだ2時間もあるな。鎮静剤をあと5mm静注してくれ」
 どうやら俺には寝ていてもらいたいらしい。何かが俺の体に起こっているようだ。それにこんなに体がだるいんじゃ起きあがることは多分不可能だ。そんな俺の体のことよりも博士がどうなったか一番心配だ。
「あの・・」
 俺は、疲れ切った全身の中からしゃべる気力をかき集め質問しようと試みたが、そんなことは全く無視され、左腕に注射を打たれた。
 即効性なのか、瞬く間に意識が吹っ飛んでいった。