★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(6)

2011年06月12日 | 短編小説「彗星の時」
「それはありがたい。ここから『天の国』まで約二週間かかります。よろしくお願いします。さて名前も思い出せないとは何かと不便ですね。どうしましょうか」
 ヤーコンは手に持った杖をいじりながら言った。
「そうだ、輝く剣を持っているので『シャイン』さんと言うのはどうかな」
 パンを飲み下したケインは男のほうを見ながら言った。
「・・シャイン・・」
「いいんじゃないですか。シャイン殿」
「・・シャイン・・ああ・・わかった・・」
男は、何かを思い出したいように、遠くのほうをぼんやり見つめながら小さくつぶやいた。

 その時、シャインの目つきが突然鋭くなり、低く、強く二人に言った。
「何か来る、大きいものが近づいてくるぞ!」
シャインは、藁から跳ね上がり、ヤーコンとケインの腕をいきなり掴んで、出口に猛ダッシュした。
 二人はわけが判らず、ものすごい力でシャインに引っ張られ、納屋の扉から外に転がり出た。
 外に出たとほぼ同時に、古いとはいえとりあえず建物の形をしていた納屋は、真上から神の鉄槌でも食らったように、ものすごい音とともにぺしゃんこにつぶされ、一瞬にして瓦礫の山と化した。あたりはもうもうとした埃に包まれている。
 それを見たヤーコンは、しりもちをついたまま、驚愕の顔で言った。
「こ、これは、、、あぁ、まさかあの戦鉄牛か?」
「戦鉄牛!」
 ケインがヤーコンの言葉に聞き覚えがあるかのように、同じく地面に転がったまま上を見上げた。
 納屋をつぶしたのは、巨大な鉄の足だった。その足をたどって見上げると先方には楕円形の胴体のようなものがあり、そこから、納屋をつぶした足を含め4本生えている。その胴体には4つの光る目があり、納屋から駆け出した3人の方を見つめていた。


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