★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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義腕の男2(56)

2016年06月18日 | 短編小説「義腕の男2」
 その時、壁についている赤燈が赤く点滅し始め、部屋中を赤く染め出した。
 男はそうなることが事前に判っていたらしく、さしてあわてることもなく、すぐさまパソコンを操作している兵士に言った。
「意外と早いな。もうすぐ来るぞ。あとどれくらいだ?」
「はい。あと10秒です」
「そうか・・」
 そう頷くと、男は数少ない装備品の一つの腰についたポーチから小さな銀色の箱を取り出し倒れているMr.Rの身体に貼り付けた。
「フム・・こんなところで役に立つとはな・・」
 男は、そういいながら取り付けた箱の表面をいじり「こんなものか・・」とつぶやくと、倒れているMr.Rの肩をつかんで持ち上げた。
 倒れたままの形で、50センチ程ふわりと浮かび上がった。
 不思議な光景だった。まるでMr.Rが映っている写真の一部をハサミで切り取って動かしているように見える。
 パワードスーツを着たMr.Rは、軽く100kgを超えるだろう。あんな風にふわふわと浮かび上がるように持ち上げるには、パワーショベルのような重機か、それこそMr.Rのようなパワードスーツが必要になるはずだ。
 だが、その男の着ているものは、やけにスッキリとした白っぽい軽装にしか見えない。あの見かけでそれだけのパワーを秘めていたらそれはそれですごい技術力なのだろうが、どうも違うようだ。
 男はまさに風船を持つかのようにMr.Rの肩あたりを軽くつまんでいるだけでその巨体を空中で自在に操っている。
「・・重力コントロール装置・・え・・でも外向タイプなんて聞いたことがない・・」
 小さな天才科学者がその光景を見ながら、俺の隣でぶつぶつ言い始めた。
「・・確かに重力コントロールはある程度まで可能になってきたけど・・あくまで閉じられた空間内だけのはず・・。でもあれは一体・・」
 何気に博士の方を見てみると、その目つきはもう見かけの少女のものではなく、何かに憑りつかれたような、狂気の色さえ感じられる凄みのある輝きを放っている。


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