★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(53)

2012年02月23日 | 短編小説「彗星の時」
 そのタイミングを見計らったかのように、ケインは右手を上げて腹に響くような声で言った。
「我が名は、ケイン。カール大帝の真の後継者であり、天神の力を受け継ぐものなり!」
それを聞いた兵士達は歓声を上げた。
「うお~、やった~。ケインさまぁ、ケイン大帝、大帝ばんざーい」
あっという間に、群集が何千人と集まり「ケイン大帝」「ばんざい」コールが響きはじめた。
「あれは、地上投影用超遠距離ホログラム・・。ということは、ケインは「イオノスⅢ」の操作権を獲得したということか・・・ん・・[イオノスⅢ]・・・」
シャインは、群集の叫びに応えているケインのホログラムを見ながら頭を抱えていた。
「・・[イオノスⅢ]・・なんだ・・俺はいったい・・・」
何かを思い出しそうな気がした時、シャインの頭の中にケインの声が響いた。
『シャインさん、聞こえますか。聞こえるのであれば、まだ超時空通信機能は損なわれていないようですね。では、今からメディカルプログラムを送信します。これが走れば記憶を含めた全ての機能が回復するはずです。エネルギー不足の部分は、王宮の『操りの間』に来てくれれば、チャージできますよ。じゃあ、プログラムを送りますね』
そう聞こえたとたん、まるで雷に打たれたような衝撃がシャインの身体を突き抜けた。
シャインの頭の中には、失われた部分の記憶がまるでピントを合わせた写真のように次々と鮮明に蘇っていく。
「そうか・・そうだったんだ」
(俺は、長い長い間、戦略軌道衛星[イオノスⅢ]のサイボーグ格納室で待機状態を維持していた。だが、あの日突然地上に発出され、気がついたらあの丘の上に立っていたのだ。通常は、発出される前にミッションプログラムがインストールされ、そのために行動するのだが今回は何もなく、通常装備を身につけたまま地上に移送された・・)明確になる記憶の波に呆然としているシャインの頭の中に、再びケインの声が響いてきた。