★しろうと作家のオリジナル小説★

三文作家を夢見る田舎者です。
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彗星の時(45)

2012年02月01日 | 短編小説「彗星の時」
ケインが部屋の中を進んでいくと、最初の扉はひとりでに閉まっていき、誰も入れなくなった。ジュンサイとヤーコンは、固唾を呑んでガラス越しにケインを見つめていた。
「そうじゃ、その扉じゃ。そこまではわしも行けたのじゃが、その扉を開けることはできなんだ」
 ちょっとびっくりしたようにヤーコンはジュンサイを見た。
「ジュンサイ様、入られたことがおありなのですか」
「うむ、代々白魔導師がこの『操りの間』の鍵を守ってきた。当然部屋の中で何が起きるのか知らねばならん。この部屋の隅々まで調べたが、あの『聖なる扉』を開けることはできなんだ。歴代の白魔導師も試したようだがの」
「そうなんですか・・」
 天の国随一の能力を備えた白魔導師でさえ何ともできなかった『聖なる扉』を、いかに伝説どおりとはいえ、まだ子供のケインがどうするのか、ヤーコンには興味がふつふつと沸いてきた。
 ケインは、言われたとおりに部屋を進んだ。王宮の豪奢さとは裏腹に、何の飾りもない白色の小さな四角い部屋だった。数メートル進むと、ジュンサイが言った『聖なる扉』があった。 その扉は、取っ手も模様もなく、銀色の無機質な光沢を放っていた。
 ケインは、部屋の中を見回し、どうしたものかと思いながら扉の前に立った。
 すると、銀色だった扉が段々と白く光りはじめ、眼を細めないと眩しくて直視できないくらいに輝いたかと思うと、いきなり元の銀色に戻っていた。その間ほんの数秒だったのだが、いつの間にかケインの目の前に一人の女が立っていた。
「お待ちしておりました。ケイン様」
 扉と同じような銀色の服装をした色白の女だったが、覇道で作り出した影法師のようなはかない感じがした。