鴨着く島

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「交通戦争」は終わった?

2023-01-05 21:13:43 | 日本の時事風景
去年の交通事故による死者数が2600人余りと、統計を取り始めて以来最少になったと報道された。

たしかに少なくなった。鹿児島県でも40数人とこれも最少を更新した。

昔、団塊世代が自動車免許を取り始めた頃の1970年代は「交通戦争」と言われ、死者数が1万人を超えていたので、隔世の感がある。

その頃は今より車、特に自家用車の数は圧倒的に少なかったのだが、道路事情が悪かったのと、車自体の性能が今より劣っていたためだろう。ラジエーターの沸騰で立ち往生してしまった車やブレーキの不具合など、割とよく見かけたものだ。

余りの交通事故死者の多さに「車は走る棺桶」と揶揄されていたのを思い出す。

高速道路での「あおり運転」がよく話題になり、それによる死者も出ているが、高速道路は車の利用頻度からすれば交通事故死の割合は一般道路よりはるかに少なく、車にとっても人にとっても安全である。

一般道路の場合は、車対人の事故が死を招いている。鹿児島県の40数人の死者のうち半分以上はそういった事故で、しかも高齢者が被害に遭う場合がほとんどだ。

いずれにしても日本では今や「交通戦争」は終わりを迎えつつあるようだ。

外国ではどうだろうか?

去年の12月半ばだったと思うが、ロシア大統領のプーチンが出征兵士を持つ家族(ほとんど母親らしき女性たち)と懇談する場面が放映されたことがあったが、プーチンの言葉で、

「我が国では交通事故死で3万(が無駄死にしており)、ウォッカによる中毒で3万も死んでいる。今度の戦いでたとえ戦死したとしても、それは国家のために戦った名誉の死だ」(※カッコ内は引用者の補い)

と集まった家族(母親)の前でそう述べ、家族を慰めていたが、この場面の評価は別として、ロシアでは交通事故死者が3万人もいることが明らかになった。アルコール中毒死も3万いるという。

ロシアは今ウクライナへの侵略戦争を起こし、アメリカなどのメディアによるともう数万人規模の戦死者が出ているというが、仮に3万としてもプーチン流の解釈によれば交通事故やアルコール中毒によって無駄に死ぬよりかはるかにましな「名誉の死」なのだ。

3万という交通事故死者を見ると、日本の2割増しに過ぎない人口(1億4千万)からすれば、こっちもまさに戦争であり、プーチンは二つの「戦争」を抱えていることになる。

アメリカの交通事故死者数も3万ほどと聞いたことがある。この数はロシアと肩を並べるが、人口はアメリカの方が2倍もあるので、交通事故死亡率はアメリカが1とするとロシアは2であり、ロシアの死亡率は驚くほど高いことになる。

アルコール中毒死に関してはおそらくアメリカの方がはるかに少ないだろう。その代わりアメリカで多いのが「銃による死」だ。

これも約3万と聞いたことがあるが、すべてが他殺(殺人)なのか銃による自殺も含めているのか寡聞にして知らないが、いずれにせよ「銃による死」はアメリカの専売特許だ。一般人の銃の保持は憲法で認められた権利だ、というのだから始末が悪い。

ロシアのプーチンは戦線に送り出す若い兵士に「たとえ死んでも、交通事故やアルコール中毒で死ぬよりはるかに国のためになる。名誉だし報奨金が出るぞ」と言っているのだろうか。

アメリカはアメリカでアフガニスタンやイラクへ送り出した若い兵士に「たとえ死んでも、国内で銃撃戦をやって死ぬよりはるかに国のためになる。名誉だし、金になるぞ」とでも言ったのだろうか。

そんな風には言わなかったことを願うが、いずれにしても日本で「交通戦争」は過去のものになりつつあるのは喜ばしい。