鴨着く島

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同盟国と同志国

2023-01-08 21:05:22 | 専守防衛力を有する永世中立国
今日、陸上自衛隊の第1空挺団(落下傘部隊)が新年の展示訓練を「同盟国アメリカ」と「同志国イギリスおよびオーストラリア」の軍隊傘下のもとで行ったというニュースがあった。

同盟国といえば無論アメリカで、日米安全保障条約に基づく同盟国だが、「同志国」とは初めて耳にする言葉だ。

端的に言うと、この同志国とは例の「クワッド」に属する国のことだろう。

クワッドは日米豪にインドを加えた「4か国」による安全保障と経済的連携を目指す枠組みで、去年初めて首脳会談(日米豪印戦略対話)が行われた。

クワッドにイギリスは属していないが、オーストラリアはイギリス連邦の一国なので、実質的にはイギリスも「同志国」だろう。

クワッドの目的は対中戦略にあり、インドと太平洋における自由往来を確保しつつ、中国を囲い込み、中国の軍事的な海洋進出に圧力をかけることにある。

だがしかし日本は日米安全保障条約という日本とアメリカの二国間同盟を結んでいながら、さらにクワッドの中でもアメリカとの連携を持つという「2重の同盟」となるが、これをどう理解すればよいのだろう?

そもそも国連憲章では「二国間軍事同盟」は認めておらず、多国間による同盟によって紛争を解決しようというのが最大のテーマなのだ。

国連の成り立ちそのものが、まさにその理念によって裏打ちされている。

ところが国連憲章の第53条によって、国連の創設国家群(連合国家群)に楯突いた日本はじめドイツなど枢軸国家群について「旧敵国」というレッテルが張られており、結果として日本などがどんなに国連分担金などを負担しても、常任理事国には成れないでいる。

しかしその旧敵国でも「自由と民主主義(選挙による議会運営)」が国家の屋台骨として機能するようになれば、堂々たる自主独立の加盟国になるはずだった。

だが残念ながら東アジアをめぐる共産勢力の伸長によって朝鮮動乱(1950年6月25日勃発~1953年7月27日休戦協定)が起こって風雲急を告げることになった。

そのため1951年9月28日のサンフランシスコ平和条約によって晴れて世界の民主国家の仲間入りをしたにもかかわらず、同時に日米安保(旧安保)が結ばれて国連軍の駐留から米軍の単独駐留へ移行し、そのまま今日に至っている。

ところがここへ来て米中間の軋轢が強まり、中でも台湾情勢をめぐる中国の不穏な動きが米国をして危機感を抱かせるようになったため、クワッドを利用して日米豪英による共同訓練が陸上自衛隊習志野演習場で開催されたわけである。

私などはこのように多国間の共同訓練は歓迎するが、アメリカとだけの日米同盟による共同訓練はすべきではないと考えている。国連憲章に抵触するからだ。

日米安保解消後の多国間による枠組みの一つとして、このような取り組みは必要で、そこではアメリカも多国間の一員として参加すればよく、何も二国間に縛られる必要はない。それでこそ日本独自の積極的平和主義が生かされる。

日米安保を結んだまま、アメリカが今以上に中国敵視政策を取った場合、台湾防衛にあたって日本が今のウクライナ以上にアメリカの楯になる可能性が高い。

対米従属が好きな人は「これぞ醜(しこ)の御楯」と喜ぶのだろうが、とんでもない話だ。


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