回遊魚の旅日記

時の流れる音をききながら歩いたり歌ったり
少しづつ昔の暮らしをとりもどしつつ。

東海道を歩く21土山~水口~石部

2011-11-22 13:36:26 | 東海道五十三次

11月20日(日) 曇り時々晴れ

昨夜来の雨は止むが朝はまだときどき小雨が降る。

朝食を7時に摂り、8時少し前宿を出発。

宿は国道沿いなのでいったん迂回して旧東海道の街並みに入る。

朝の土山宿は少し冷えてしんと静まっている。

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街道を旅していると、通り過ぎた宿場に再び戻ってくるということは滅多にないが、同じ場所を時間や季節を変えて来てみるというのはまったく違う表情のひとりの人間を見るようでおもしろいものである。

しかし、関から西の道にたたずむ宿場、村里の家々は、朝夕に表情は変わっても大きな歴史の流れの中では不変の趣あり。

昨日峠を越えるまで(三重県側)は鈴鹿川に沿う道、今日から(滋賀県側)は野洲川(やすがわ)に沿う道となる。

歌声橋を渡って東を眺めると歩いてきた鈴鹿の峰々が遠くかすみ、西側を見ると紅葉し始めた木々の中を縫って野洲川が清く流れている。

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市場、徳原、大野のあたりは国道から外れたのどかな歩きやすい里の風景。

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途中の村々がすべて間宿(あいのしゅく)であるかのように次の宿の水口まで断続的に旅籠が続いている。

ちょうど長泉寺という浄土宗のお寺の周年行事に行き当たる。にこやかにゾロゾロと和尚さんが集まって楽しそうにお経をあげている。

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しばらく行くと右手におおきな酒樽をくりぬいたオブジェのようなものが見える。

その向かいの古びた家の塀をみると安井酒造と書いてあり

その隣に次のような看板と杉玉。

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このあたり「安井」姓が多い。

玄関脇には酒造りに使う水が井戸から引いてある。

まだ40代だろうか、感じのよい杜氏さんが「いらっしゃいませ、どうぞ中にお入りください」と挨拶してくれる。

ここの地酒は「初桜」と「あいの土山」。試飲してみたら井戸水の味と似てとても穏やかな風味。

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「昨年はエボルタ君もここを通ったんですよ」と楽しそうにアルバムを見せてくれる。もしかすると杜氏さんの性格も酒の味に反映されているのかもしれない。

酒造を出て家々の窓や玄関に嵌めてある懐かしいガラス板を見ながら歩くのも楽しい。

この土山~水口の間は歩いているとなんだか「美しい日本の私」という感覚がしてくる。

こういう景色は日本のどこにでもたくさんあって無意識のうちに原風景として誰もが日本の美意識を心の中に育んでいるのだろう。

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水口近くになると杉を使った家屋が多くなる。杉は水口の町の樹であるらしい。

11時。水口宿に着。

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天気も良くなり始め、古城山の麓の道はうららかな小春日和。

道端に売られていた野菜。「ひのな」って初めて見た。

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この宿場は水口城があったためか、町は幾筋もの道に分かれ、城下町特有の曲手道(かねんて)になっている。

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商いが盛んだったらしく、今もその名残をとどめ現在でも活気がある。

春の祭りには曳山巡行も出る。

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お昼にはまだ早いが空腹を憶えてきたので和菓子屋さんで「忍者最中」を買って歩きながら食べる。

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何といってもこのあたりは忍者の里、甲賀(こうか)が近いのだ。

水口の宿は古い街並みを土地の人々が生活しやすいように、また旅人にも歩きやすいように上手く現在に生かしている良い例であると思う。

この町は大いに気に入った。

メンソレータムでおなじみの近江兄弟社所縁の教会が町の懐の深さを出しているような気もする。

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12時。

近江鉄道の踏切を渡り、水口高校の手前の軽食屋さんでオムライスを食べる。

店内でおしゃべりしていた女性3人グループの言葉を聞くともなしに聞いていると、柔らかな京都弁のようだ。

いよいよ京都近しという感が強く湧いてくる。

1時。次の宿場石部を目指して軽食屋さんを出発。

ここまで気分のよい道だったので寄り道をしてばかりで予定より遅れている。少々早足となる。

東海道宿敷設当時に作られたまっすぐな道を歩く。左右は畑が広がり北風が心地よい。左に眺められる山は鳥ケ嶽。

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泉川を渡り「横田の渡し」跡に出る。141

ここにも大きな常夜灯。近江路では常夜灯は闇夜を照らすばかりでなく旅人のランドマーク的存在でった。

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渡し場跡から迂回して横田川(野洲川)を渡る。現在は立派な橋が架けられている。右には「TOTO」の大きな工場がある。

橋を渡りきったら脇道を下に降りるとJR草津線の三雲駅。

駅前を右折してJRに沿う形で甲西(こうせい)、石部と歩を進める。

途中水道橋のようなトンネルを2本通る。

天井川とでも呼ぶのだろうか、トンネルの上はまさしく水道で一本目が大沙川、2本目は由良谷川が流れている。

一本目、大沙川の下のトンネル。

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二本目、由良谷川の下のトンネル

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先刻、三雲駅で見た時刻表によると石部発4時9分の電車があることがわかった。その電車に乗るために少々急ぎ、疲れも感じたのでjお寺の境内でひと休み。

3時15分。石部宿に到着。

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水口に比べると石部の宿場は静かなたたずまいを見せている。

JR草津線石部駅で無事4時9分発草津行きに乗車。

ここから草津線で草津まで出る。草津から東海道線に乗って京都、京都から新幹線。

草津駅で乗ったのは東海道線「播州赤穂」行き。う~~ん、ついにこんな地名の出るところまで来たか、と感動。路線図には「大坂」「尼崎」「神戸」なんて書いてある。

京都にゴールしても、もっと先まで足を延ばして歩いてみてもおもしろいだろうなあ、と思ったり。

本日の歩行距離:約25㎞。京都まで約38㎞!!

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2 コメント

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断腸さん (やまびこ)
2011-11-27 21:56:41
宿場・・朝と夜はモノクロの世界ですよね。
東海道はいつ走るのかな?

さてさてこちらの京都着は大晦日になりそうですよ[E:bell]

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いいですねえ。 (断腸亭)
2011-11-26 22:32:42
朝靄の宿場町。
旅というのは、こうでなくてはいけません。

やっぱり、古街道は、関西のがよく残ってるようですね。

体力があるうちに、行かなくては・・・。
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