国道沿いに、すぐに見落としてしまいそうな店構えで、
いかにもやる気のなさそうな雰囲気を醸し出しているこの店…。
店の名前も何にも書いていない。
お世辞にもきれいとは言えない入口を開けると、人のよさそうなおっさんが一人…。
小上がりに案内され、座ろうとすると、何故か座布団が2枚ずつ…。
4人の座敷に8枚の座布団…。
「どういう意味なんやろ?」
不思議に思いながら席につくと、テーブルはねっちょり…。
目の前の炭火のコンロも、
「私もうすぐ定年ですねん、てか、1回目の定年を終え、2年契約の嘱託ですねん」てな感じでくたびれている。
ちょっと傾いてるし…。
店内を見回しても、メニューらしきものは一切ない。
焼肉屋であることは知っていたので、マスターに聞いてみた。
「ここはどんなシステムですのん?」
「ああ、ウチはこれだけですわ」と指さす方向には「特選和牛」と書いたポスターが。
つづけて「ウチはお任せコースしかありませんねん」
他には?と聞くと「あとあるのはキムチぐらいですわ」と言いながらタレをもってきた。
同時におしぼりを渡され、お飲み物は?と。
キリンビールを頼み、おしぼりでせっせとテーブルを拭く…。
拭いても拭いてもテーブルはネチョネチョはとれなかった。
ビールとキムチが運ばれ、まずは乾杯。
クイックイッとビールを半分ほど飲んだところでいよいよお肉が登場。
ビックリしたのはそのボリューム!
分厚く切られたヘレのかたまりがドド~~ンと。
何やら怪しげなタレがかかっているものの、その中身は見事なサシの入った旨そうなお肉。
思わず財布に中身が心配になった…。
こんな汚い店でたいしたことないだろうと、金額も何も聞いていなかったのだが、この肉を見てちょっとビビった。
いきなり聞くのも「ビビったなこいつ」と思われそうだったので、ぐっとこらえまずは焼いてもらう…。
焼くのもマスターがしてくれるようだ。
驚いたことに、フォーク2本で裂くように捌いてゆく…。
「半生くらいが美味しいですよ」と言われ、まずは塩で…。
んまい!
タレで…、
んまい!
と二枚食べたところで、「ところでマスター、これってなんぼなん?」といかにもさりげなく聞いてみた。
「ああ、これですわ」と人差し指を立てるマスター。
「もちろん一人やんなぁ」とオイラ。
「ガハガハハ、あたり前でんがな、その代わり飲み物も全部ぶっこみですわ、そこらの焼酎どれでも作りまっせ」と棚を指さす。
そこには、そこそこの芋焼酎がズラリ。
「佐藤」や「伊佐美」なんかもあったが、写真は撮り忘れ…。
「じゃあ、サッパリしたやつを水割りで…」と頼み、チビリチビリ。
嫁さんはもうかなり満腹に近いらしい。
三枚目でギブアップ宣言しかけたが、持ち帰るよりも食べる方を選んだ夫婦…。
ロースなら無理だっただろうが、ヘレなのでなんとか完食。
その間におかわりの焼酎を五杯ほど…。
二人で約1kgのヘレで満腹になり、ビールと焼酎6杯で2万円。
贅沢である事に違いはないが、決して高いとは思わなかった。
ただし、時により値段が違う事があるようなので要注意です。
てか、予約制の店なので必ず事前に電話の必要あり!らしいです。
今回オイラ達はマスターの勘違いでたまたま食べれたらしいのでラッキー?でした。
満腹で店を出ると、北方角とは反対側にきれいになった看板が…。
ヘレ専門店て書いてある…。 ちゃんと見とかんかいな…。