港をゆっくりと出た船は、のんびりと沖を目指す。
ポイントまでは「ほんの5分」だそうだ。
左に越前岬を見ながら少し南下した所でエンジンがスローになった。
ここかな?と思い準備しようとすると、
「何か所か見ておきたいポイントがあるのでもう暫く待って下さい」と船長。
その後言葉どおり、何か所かで魚探の反応を見ながら船をゆっくり進め、GPSにマークを付けていた。
やがて今日のポイントに着いたのか、餌のエビを配り、パラシュートを投下。
「水深72mです、やってください」
テンヤに餌を…、でかっ!
エビが大きくて孫針が届かない…。
止むなく、大きい針のテンヤに付け替え、まずは7号で落とし込んでみる。
幸い上潮がすべるものの、中層から底にかけての潮は素直で、7号でも充分底が解る。
ただ、竿先の感覚が鈍り、カツカツという鋭い信号は伝わらない。
普段の浅場(30m程度まで)ならエサ取りのアタリまで明確に解るのに、今回はなかなか難しい。
2度エサをかじられて3度目にテンヤを5号に変えてみた。
上潮ですべりながらも何とか底は解るし、さっきよりずいぶん扱いやすくなってきた、
エサ取りのアタリもさっきよりは解る。
すると、コツコツと少し大きめのアタリが出た。
グイッと大きく合わせてみるとブルルルと生体反応、でも鯛ではない、
多分ガシラかなんかだろうと思って巻き上げると、干物でよく見かけるカレイが付いていた、しかもスレで。
N村君はレンコダイ。
オイラにはエソ。
N村君はレンコダイ。
オイラにはガシラ。
N村君はレンコダイ。
オイラにはホウボウ。
N村君はレンコダイ。
「なんや~レンコダイしかよう釣らんのかいな」と言うと
そんなことないですよと大きなウマヅラを釣った。
鯛を釣りなさいっ鯛を!
前のほうでは常連さんがオイラ達の釣りを不思議そうに見ていた。
「何してるんですか?」
「これがひとつテンヤの釣りなんですが…」
不思議そうな表情でただひたすらに中層を巻き続ける常連さんと船長。
オイラとN村君は「喰わない」と言われた底しか攻めていない…。
やがて、魚探に何も反応の無いところで「ガツガツ」と大きなアタリが出た。
少し誘うと、ゴツ、ギュギュギュ~ンっと竿先をしめ込む、
大きく合わせてやり取り開始。
時折、大きくしめ込まれるがドラグが大きく滑る事もなく、引きの感じからは1kg程度の鯛だと思う。
ただ、深いところから巻き上げるで、腕が疲れてだるだる。
電動に慣れてしまうと思わない所で体力の無さを感じる。(笑)
で、船の下の潜られながらも浮いてきたのは1.5kgくらいの鯛。
まだ婚姻色で黒っぽく、お腹もポッテリとしていた。
「イケスに入れて欲しいんだけど…」と言ってみたが、
「イケスに入れるより絞めた方がいい」と勝手にえらを切り、脳天にカギを入れる。
鼻から針金をいれ、神経ぬきしようとしてくれているのだが、一向に入る様子はない。
もちろん魚はデッキの上で水氷は一切なし。
魚を弄り回し、「入った入った」と言う頃には魚は生ぬるくなっているだろう…。
よっぽど「自分でやるわ!」と言いたかったが、ぐっと我慢した。
その後チクリとイヤミを言ったのは当然だが、その鯛は氷でギンギンに冷やされ、
何のために神経抜きしたのかわからない状態になり、N村君にもらわれて行きました。
多分、お腹にはべっとり血が残っていたでしょう…。
イケスに入れない理由は「イケスに入れると魚が黒くなっちゃう」かららしいです。(アホか!)
んで、ひと通り弄りまわされた後の魚を持って「証拠写真」をとったが、
写真は正直でめちゃめちゃ機嫌悪そうな顔で写ってます。
ほら。
まあ、それでも「大人」なオイラ達は不信感ありありなのを見せず、自分たちの釣りを最後まで楽しんできました。
船長も必死で、「こんなままでは帰せません」とあっちに走りこっちに走りと努力はしてくれました。
12時までの釣りのはずが、帰港したのは14時半、2時間半も延長して頑張ってくれましたが、
オイラ達と根本の考えが違うので、溝が埋まる事はありませんでした。
「ひとつテンヤ」をしたいのならお勧めは出来ません、
テンヤ(餌カブラ)を使って大きな鯛を釣りたいのなら逆にお勧めなのかもしれません、
魚探の反応で見る限り、魚影は豊富で、爆発力はあると思います。
ポイントの設定、流し方、釣り方、所が変わればいろいろ変るのでしょうが、
「ひとつテンヤ」という名がある以上、名前どおりの釣りをして欲しいとオイラは思いました。
「ひとつテンヤで大物を!」と意気込んで行った分、残念な気持ちが強くなったのかもしれません。
船は手入れもよく、船長の人柄も、サービスもすべてにおいて平均点以上の船ではあります。
ただ、オイラとは相性が悪かった。
そういう事なんだと思います。
こんなこともなけりゃ、刺激もないですし…、いい経験でした。(笑)