日本庭園こぼれ話

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ヤクスギ=巨木の話(5)・・・屋久島(改編)

2021-10-06 | 巨木・御神木

屋久島では「ひと月に35日雨が降る」と、林芙美子が小説の中で表現したように、降水量の多いこの島では、多様な植物相が形成されていますが、中で最も有名なのは「ヤクスギ」。

推定樹齢3500年とも4000年とも言われる、ヤクスギのシンボル「縄文杉」までは、脚力の都合で行けなかったのですが、「登山をしなくても屋久島の魅力を満喫できる」場所として人気の「白谷雲水峡」ハイクでも、ヤクスギの巨木に出会えます。

(上: 森に囲まれた清流に沿って歩く白谷雲水峡ハイク)

緑濃い照葉樹林の中を歩き始めると、早くも姿を見せるヤクスギ。ちなみに「ヤクスギ」の名を冠するのは、ここでは樹齢1,000年以上のスギに限られ、それ以下のものは「コスギ」と呼ばれて、まだまだ半人前とのこと。

特別の巨樹や形状の変わったヤクスギには、それに応じた名前が付けられています。一番有名なのが「縄文杉」ですが、他にも「弥生杉」「紀元杉」「三本足杉」「仏陀杉」などなど。

(上: 仏陀杉=ヤクスギランド入場券の写真より)

スギというのは一般に真っ直ぐな木というイメージがありますが、ヤクスギの幹には、ゴツゴツした瘤(こぶ)がたくさん見られます。樹脂の塊だというその瘤が、ヤクスギに表情を与え、1本1本の木がとても個性的。

 

ヤクシカやヤクザルにも遭遇しながらのハイキング。やがて巨木の根元がトンネル状になった「くぐり杉」(下の写真)を抜けると・・・

まもなくハイキングの終点。

入口からゆっくり歩いて約1時間。白谷雲水峡の奥深い森の中に広がるのは、特別に「もののけ姫の森」と名付けられ、保護された一画。宮崎駿監督の「もののけ姫」の舞台となった、あの美しく神秘的な「シシ神の森」のモデルと言われています。

そこは、これまでにも増して深く、青味さえ帯びた緑の世界。樹木と岩が渾然一体となり、その全てがコケに覆われ、霊気を感じる静寂感に包まれたその森の情景に圧倒されました。