今夜は、隔月の水曜日の夜、行われている、仲間内の読書会です。
テキストは「君たちは今が世界」(朝比奈あすか)です。
作者の朝比奈さんは「群像新人賞」を受賞して、作家デビューされた方です。
いわば、児童文学プロパーではありません。
それなのに、それなのに・・・。
それぞれの子どもたちの見事な造詣。
そしてそれを受ける教師たちの姿。
この作品は、同じクラスで、6年生を過ごす、6人の子どもの、それぞれの視点で語られた物語です。
滅多に付箋を貼って読みませんが、今回は付箋だらけ。
それはそこに描かれている、言葉の思い。未来を語る重み。強さを感じる部分です。
「君たちは今が世界(すべて)」でも・・・「こんなものは、全部、通り過ぎる」
大人になるための、通過儀礼に過ぎない。
それを読みながら、先日の、統一教会がらみの、山上容疑者の顔が浮かびました。
「こんなものは、全部、通り過ぎる」という希望を持ちながら、通り過ぎなかった。状況はますます絶望的になっていった・・・。
これから、日本という国は、ますますそうした「対宗教」の問題だけではなく、大変な国になっていくような気がします。
読みながら、涙がこぼれました。
子どもたちは、子どもたちの世界を必死に生きている。
それを支えきれないネグレクトの親。気持ちだけはあっても、モンスターペアレンツになっている親。夫が中国に単身赴任で、ゴミ屋敷の中で、お酒ばかり飲んでいる母親。
作中に出てくる、6年生の子より背も低い、茫洋とした雰囲気の、友人のお母さん。いつも一緒に登校しているこのお母さんです。
その子が熱が出て、今日は一緒に行けないと、マンションの下で待っていて・・・。
彼女が一人で大丈夫かと、道の角まで、見送ってくれる、そんな一番、凡庸で、誠実な母親の姿に胸を打たれました。
見送られた、本人は「キモイ」と思うだけですが・・・。
見事に「今」の、大人と子どもの関係を現しています。
作者の観察眼に脱帽です。