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20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『草いきれ』(林博子・オリオン出版)

2012年08月14日 | Weblog
           
 
 天国の林博子さん・・・。
 いま旧盆で、鎌倉のご自宅にお帰りになっていますか?
 
 6月19日、あなたの訃報を私は信じられない思いで聞きました。
 数年前、伊豆に合宿にいったとき、膝を痛めて杖をついていらしたあなたを守るように、のろのろ歩いて、のる予定の電車にのりおくれてしまったとき。
 駅のホームで私たちは、幹事の方のご苦労も顧みず、笑い転げていましたね。
 思い出すと、あなたはいつも笑顔でした。

 そのあなたのお加減が悪いと聞いたのは、春先だったでしょうか。そこからお仲間の「おじゃがの会」の山口節子さんたちが中心になって、この『草いきれ』をオリオン出版の平湯克子さんに作っていただこうということになったと聞きました。
 本が届いたすぐ直後、あなたの訃報が届きました。
 あなたを失った悲しみから、作品のなかのあなたを掴みたくてすぐに読み始めました。
 けれど1話の「スリーエル・・・」のみずきのお母さんのセリフを読んでいたら、ふいに悲しくなり読めなくなってしまいました。
 だってあそこで幻想で出てくるお母さんは、あなたそのものでしたから。

 そのとき、私は誓いました。
 八月の旧盆で、あなたが鎌倉に帰っていらしたときまでには、ちゃんと読めるようにしておこうと。そしてあなたのことを拙blogでご紹介しようと・・・。
 そう思ったら、少しだけ心が楽になりました。
 この作品にでてくる人間は、みんななにか苦しみやつらいことを抱えている子どもたちばかりです。あなたは、そういった人たちへの暖かなまなざしをいつも持ち続けていたひとですね。

 思えば、あなたとは日本児童文学者協会の創作教室でお会いしたのが最初でしたね。
 当時、創作教室を担当している事業部の責任者をしていた私は、半年間の講座の、最初と最後だけ講義にうかがい、そこで林さんたちにお会いしたものです。終わると近くの居酒屋でみんなで飲んだりしてね。
 その後「Beー子どもと本」という読書会にも鎌倉からときどきお越し下さったりと、どんどん親しくおつき合いするようになっていきました。
 あなたは創作教室のときから、文章のお上手さには定評のある人でした。ご自分の暮らしの中のディテール。お豆を煮るシーンや梅干しを干すシーン。ご一緒に暮らしていらしたお義母さまのことを書かれるまなざしなどに、いつもハッとさせられたものでした。
 林さん、私はいまも、あの「小豆を煮る」お話が大好きです。ディテールをこれだけ確かに書ける人はいないと、そのリアリティの見事さに驚いたものです。

 6月19日、平湯さんから林さんご逝去のご連絡をいただいた日、私はあなたが一番お好きな花とおっしゃっていた花菖蒲を近所の公園に見に行きました。
 すっくとした姿勢で凛と佇んでいる花菖蒲は、まさに林博子さんそのものでした。
 林さん、お仲間たちの力で、いいご本ができて、ほんとうによかったですね。
 どうぞ空からずっと、あのお優しい笑顔で私たちを見守っていてくださいね。
 お盆で、大好きなご家族やお孫さんたちとどうぞこの3日間、楽しくお過ごし下さい。 
 それでは、またいつか、お会いする日まで。               合掌
コメント (2)
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