昨日は久し振りの晴で釣りに出掛けた。この季節は砂浜の小穴を掘って砂ガニを捕まえて餌にし、クロダイ狙いである。クロダイ狙いは1年振りであり少しは期待したが残念ながら坊主だった。それよりも残念と言うか物足りなかったのは顔馴染みが一人も居なかったことだ。折角の晴れ間なのできっと居ると思ったがいない。釣り人自体も少なく、肩透かしでサーファーだけが賑わっていた。顔馴染みの連中は暫く見ないと思ったら病気か悪くすれば死んでしまった可能性がある。実際何人かは入院したとか亡くなったという噂を聞いた。最後の知り合いが釣り場に集う他愛のない連中というのもどうかと思うが年が行ってから特別懇意になるような友達を作るのもどうかと思っている。何となく勝手に集まり散って行くというのが自然のような気がする。仕事も友人も静かにフェードアウトすることが性に合っている。
見かけない若者二人がいたので声を掛けた。一人は流行りのモヒカンカット(頭の中央に髪を残し両サイドはツルツルに刈り上げ)である。街で出会うと絶対に声など掛けない相手である。モヒカンの彼は初めてここに釣りに来たという。初めてなので100円のルアーだけどヤッパリ安物では釣れないですかねえという。明らかにこちらが年上と分かっての事だろうが敬語で話してくる。魚は値段を知らないから大丈夫だよ。居れば釣れるよ。道具で差が出るのは相当上級者になってからでそれもちょっとした差だよと言うと、安心しましたと応える仕草も頗る子供っぽく可愛いものである。釣り場で初対面のひとでも時々物凄くぞんざいな喋り方をする人がいる。偉そうに、あるいは乱暴な口にききかたである。こういう人はさっさと切り上げて雑談までは進まない。大概は丁寧語で返ってくるがあの若者達はきっと近くの工場で働き先輩連中から普段扱かれているのだろう。自転車で1時間以上かけてきたとのこと。折角の休みに仲良し二人が気晴らしに釣りにでもと思って来たのだろう。遠くから見ているとルアーがまともに投げられていない。確かに初心者である。こちらが早く納竿したので帰り際に、何度か来ればきっと釣れるよと声を掛けると、ありがとうございますと返事した。人を見掛けで判断してはいけない。別に私有の釣り場でもないのにちょっと上から目線で言ってしまったが、それでも帰路運転中は爽やかな感じがした。年よりの顔馴染みは段々減っていくから新人獲得も必要である。どういうタイプが一番嫌いかというと、偉そうに喋る人である。これは外観や肩書の問題ではない。浅い人間性を感じてしまう。