天気予報どおり昨日の夕方から雨になり今朝も降ったり止んだりが続いている。こう長く曇りや雨が続くとあの厚い雨雲の上に本当に明るく輝く太陽があるのかと疑ってしまう。空の上の宇宙といえばはやぶさ2である。小惑星サンプルリターンの計画は1985年に始まっているが今回のはやぶさ2は小惑星リュウグウの地下サンプルを採取という離れ業である。着陸してドリルでも使うのかと思いきや弾丸を打ちこんでクレーターを作り、舞い上がって堆積した地下サンプルを採取するという複雑なミッションである。開発計画には数多くの優秀な学者、エンジニアが携わってきたのだろう。しかも個々人の役割分担はかなり専門的に分かれており計画全体を総括している者は限られるのだろう。場合によってはその総括する人間すら個々の専門については熟知していないかも知れない。こうなると総括すら専門分野の1種になってしまう。
昔、途中入社の男が前職で深海艇のロボットアームの開発に従事していたことを誇りにしていた。話を聞いて見ると深海艇全体のことはあまり知らない、ましてや深海のことを聞くと素人である。多分アームの関節の部分だけを担当していたとか巨大開発では全容を知ることは稀なのだろう。聞く方が勝手に深海艇を開発したのだと思い込んでしまう。喋るほうも少々盛っていた感じがしないでもないが。会社に勤めていた頃はチームとして仕事をする機会が多かった。なまじリーダーなどすると何か自分一人で仕事(成果)を為しえたような勘違いをしてしまう。チームでは役割分担がなされており一人の力でできることは限られている。定年後つくづく感じるのは一人になった時に為せることは限られているのが良く分る。ロビンソンクルーソーは子供の頃読むと冒険小説だが大人になって読むとキリスト教的な倫理観に溢れた宗教書である。彼が無人島で一人で暮らせたのは幾つもの幸運に恵まれたからである。果たして現代人が無人島に辿りついて如何ほどのことが出来るだろうか。いざという時助けてくれるカメラマンやスタッフも勿論居ない。素の自分の力量を思い知らされるだろう。
はやぶさ2のサンプルリターン計画を見ていると、チームで役割分担がうまくできていれば個々が全容を知らなくても巨大開発は可能かも知れないと思ってしまう。例えばコンピュータのクラウド技術で何十万人もの開発者が参加する計画があったとする。開発自体も階層に分かれており、ピラミッドの最下層は100万人、その上層には50万人とかに分かれ、各階層の人達は上下関係は理解していてもピラミッドの頂点が何を目指しているかは知らない。ピラミッドの頂点は最終的な目的だけは理解しているが目的達成プロセスは知らない。地球規模の命題を与えれば結構巨大開発や難問解決ができそうな気がする。100万人開発プロジェクトを計画してピラミッドを組み上げるような天才は何処かにいないだろうか。