今日は個別講演について独断的寸評をする。これはスピーカー個人や団体を誹謗中傷したり、優劣をつける事を意図しない。一部でも次回主催の参考になればと願ってのことである。その意味では予稿集の内容を見ての寸評となる。予稿集を見れば、この原稿は手抜きだな、開催の趣旨を良くりかいしているな、とか中には一朝一夕にはできないと思われる大作もある。
1.今回役所の偉い方から太陽光発電は最早「基幹電源」であるという発言に多くの関係者が感動もし、確かにそのように位置づけられることは喜ばしいし、責任感も出てくる。しかし、会場の参加者(多くは関連事業者)は自分達が基幹電源の担い手であるという意識は無い。分散電源が固まって基幹となるが、それぞれの事業者は担当単位が小さく基幹電源と日々のビジネスを結び付ける(付けられる)意識も知恵も自覚すら湧かないだろう。当然、期待するのは「国として基幹電源に位置づけその完遂のためにこのような手(政策や方針)を打って行くということまで言って初めてその意味が理解できる。残念ながらその後の講演でも「手」の説明は無かった。あったのは、だから頑張ってというエールか、実務ではFIT制度の綻びを繕うルール改訂や法律改定の話だけである。
2.基調講演とも言える有名教授の講演ではFIT制度の欠陥ばかりが主張された。原稿も他のスピーカーに比べ手抜きとしか思えない簡単なものである。国の委員会などで忙しいのだろうが会場は著名故聴いて見たいと思って来た方も居るだろう。RPSや補助金政策が思ったほど普及拡大に影響を及ぼさなかった後始まったFIT制度。長エネ見通しでは2020年28GW、2030年53GWが掲げられていた。FITが始まった直後の審議会で、FIT成立に辣腕(と自分は思う)を振るわれた部長が、「こんな状態で目標(28、53GW)は達成できるのですか?」という質問に対して「FIT制度だけで達成するとは法律には書かれていない。数値目標達成を目的として始める制度ではない。あくまで現在の停滞に何らかの手を打つべきとの考えであり、他の手段も総動員しなければならない。」という主旨の発言をした。FITの効果はまだ小さく、技術的にも再エネが市場(事業者)に買取価格+技術的信頼性の点で選ばれるか否かも全く分からなかった時である。数値目標達成の全責任をFITに負わせるなと言いたかっただろう。今起こっている種々の問題(綻び)をその時点で予測することは超優秀なキャリア官僚でも難しかったと思う。今回講演では流石にFITの欠陥だけを指摘するのでは無く、FITからFIPへと新たな提案をしているところは救われる。しかし、
FIT:買取価格-回避可能費用(発電原価)=賦課金
FIP:買取価格=回避可能費用+賦課金
賦課金(一単位当たりの国民負担)が固定されるメリットを挙げているが、誰が賦課金(プレミア価値とも言える)額を何時決めるのか、果たしてその額はあらゆる側面で問題(産業振興や普及貢献など)無いのか、ゼロにすれば国民負担は無くなるのは当然だが、そもそも右辺を左辺に移行しただけで数学的には同じに見えるが、という単純疑問には答えていない。企業にも(売価-経費=利益)から経費の中に予め利益をコストとして組み込んで置こうという考えもある。数学的には(売価=経費+利益)で決めるというもの。確実に利益が読めるというのだが、電力の「総括原価方式」に似ている。残念ながら浅学非才の身にはFIPが産業にどう影響するのか、FITと徹底的に違うポイントがわからない(FIPでは意図的に賦課金を抑えることは可能というくらいは解る)。会場の皆さんはどうだったろう。その他、抑制や託送料の点では流石に大先生、鋭い指摘だと同感できるが、国民負担をクローズアップし過ぎており、消費者の怨さがPVへの逆風ともなりかねないと警鐘まで鳴らしてしている。影響力のある先生です。その後の講演(JPEAも含め)で何度も出てくる買取期間終了後はほぼ原価ゼロ円電気が新しい価値を生み出すことや電気料金の押し下げに貢献する可能性があることにも触れて欲しかったのが本音である。
2.新エネ部関連では初日の部長講演、2日目の課長講演を併せて印象に残ったものを挙げる。どちらもエネルギーミックスにおける2030年の電源構成(再エネ22~24%で原発22~20を上回る)を挙げたが間に挟まれたパネルディスカッションで委員であった橘川先生が比率が決まった経緯と欺瞞性を指摘したので比率の重厚性は失われた。そもそもPV7%は設備容量で64GW相当であるが、6月末時点のFIT設備認定量が82.5GW,FIT以前の設置量5.6GWを足すと約90GWになる。脱落組があるとしても7割程度が施工されれば2030年目標は達成できてしまう。「後15年、国の目標達成のためにメーカーは生産の必要は無いと同義語である。ただただ速やかに今までの分を竣工せよ。」と言っていることを有難がっている場合では無い。業界はエネルギー計画のみに頼る方針を改めなければ本当に産業は消滅することを自覚しなければならない。例え、他の再エネ比率を100%食っても64GWが180GWになるだけである。現実的にはPV偏重バッシングとか物理的に不安定電源をそこまで接続できるのか(コントロール可能量)と言った問題が顕在化してくる。どう考えても電力供給から電気利用のツールとして用途拡大しかないのではないかと思う。勿論他の講演で負荷能動化やEVへのチャージとか自家消費とか、エネルギー転換とか必要なエネルギーの一部を担うなら64GWはPV全体の用途の一部でしかなくなるという希望もある。天井はまだまだ高いはず(JPEAビジョン参考)である。話を元に戻す。新エネ部(課)の講演は毎回資料も緻密で情報満載、最新の政策動向も聴けるということで人気は高い。今回も原稿の美しさ、分かり易さでは群を抜く。政策動向はと言うとまさに防戦一方(PV、FITへの逆風)であり、国民負担、現行手続きの改定、系統制約の問題などFITの綻び対策に終始している。この状態で100年先まで頑張れと言われても・・・・。そもそも規則や法律の改定は作用、反作用(副作用)がある。薬にも似て、薬効あれば副作用もある。例えば価格決定時期を接続契約締結時とすると未稼働案件を減らす効果はあるが、事業計画立案(ファイナンスや種々契約事項)の困難さは否めない。そも未稼働が問題となったのは接続枠だけ確保して設備が下がるのを待って着工する悪徳業者が居る)とか権利の転売をビジネスにしている(法的には禁じられないと思うが)輩のため本来27円で運開すべき時期に32円案件が出てくるといった国民負担が増すというマスコミや一部先生方の批判から始まった。しかし、もし32円案件が予定通り運開していたらその時期から32円の国民負担は始まる。また、この案件が10年後に運開するなら事業者はその間の利益を失い、10年後の32円はインフレで実質価値は落ちており国民負担は減る。思惑通りに設備コストが下がるか否かは事業者リスクでもある。先伸ばし(悪徳?)利益確保が問題ではなく予約で系統が埋まって後続が入れなくなることが実は問題である。それは接続問題(対策は抑制だったが)と同じ意味を持つ。予約席で一杯になり後続者が入れない、継続的事業参入の妨げになることである。未稼働問題は凝縮すれば系統接続対策と同じとも言える。その対策は系統増強し、発電地点と消費地を直結することが必要だが、残念ながらここに対する施策や方針は聞かれ無い。接続問題さえ無ければ、未稼働は消費者や他業者に何ら不利益をもたらさないのではないだろうか。勿論、法はこのような事態を想定しておらず、寧ろ何とか早く運開したい(ここでは善良?)事業者ばかりが参入する前提であったために生じた綻びと言える。綻びを対処療法的に規則変更する場合、副作用でこういう懸念(申し込みの減少がメーカーの事業継続性に影響とか)が生じるが、天秤に掛けると対処療法を選ばざるを得ないといった痛みについても説明すべきである。官として痛みは説明できないならば業界側が代わって行い、緩和策としての提案も必要である。時期的に仕方が無いかも知れないがFIT制度の修繕作業ばかり施策として発表されると、夢も希望も失ってしまうのが会場に集まった事業者ではないだろうか。
長くなったのでパネル討論以降の個別講演(示唆に富む素晴らしものもあった)については、その(3)としてまた明日。
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