誰にもある失敗

　酒の上での失敗は程度の差こそあれ誰にもあるだろう。ところが悔やんでも悔やみきれない失敗とはこのことだろう。財務省のキャリア官僚が電車内で暴力を振るって逮捕された。次官候補の一人と言われたエリートのようだ。年齢も56歳とかで天下りも含めてやり直しは結構難しいだろう。キャリアを棒に振るという典型だ。家族もトホホである。でもこの人は多分他でも酒で失敗したことはあるだろう。大事に至らなかっただけでも良かったと思う他ない。
　偉そうに言えない。自分も酒で失敗したことは何度かある。単身赴任していた時会社で忘年会か何かあった時のこと。元々酒はあまり飲まないし強くもないのだが帰りの電車である。つい寝てしまい降りる駅を通り過ぎてしまった。反対の電車に乗り換えたらまた寝込んで通過してしまった。それもさっきより離れた駅まで。再び乗り換えたさらに遠くまでいってしまった。このままではどんどん家から離れて一生帰れないのではと夢心地にも不安になった。流石に酔いも醒めてきたが家に着いたのは午前様であった。他人に迷惑も掛けていないし棒に振るほどのキャリアもないので自己嫌悪くらいで済んだのだが。飲んだら電車で寝るなという教訓は今でも生きている。
　急性アルコール中毒（と思う）になったことはモンゴルのウォッカで何度もある。訪問先のゲルで客人として扱われ歓待してくれるのだが大抵は大事にとってあったウォッカを開けてくれる。断る訳にはいかない。中毒症状は猛烈な悪寒と全身の震えである。歩こうにも足腰が立たない。一度はモンゴルの英雄であるチンギスハーンの墳墓を訪れたときのこと。墓の前でモンゴル側の重鎮がしめやかに祈りを捧げている時悪寒と歩けなくてジープの中で休まざるを得なかった。その時私が代理で参列しますと言ってくれたのが今週末久し振りに会うT君（と言っても定年は過ぎているが）だ。本人は覚えていないだろうがその時の恩は今でも忘れられない。酒は量を飲める方ではないが、これ以上は寝てしまうか吐くか、頭痛がするという限界が分かってきた。頭痛に関しては東大出の博士から聞いたことがある。原因は酸素不足だよ。深呼吸を10分も続ければ治るよと。頑なに信じて実践していたが不思議と頭痛は止まった。ウィグルでは仕事の関係で何日も深夜まで打ち合わせがあった。夕食を挟んで行ったが毎回パイチュウ（白酒）が出る。現地の人は平気だが何度吐いたことか。酒の上での成功は聞いたことが無い。楽しい想い出は忘れて失敗ばかり覚えているのは酒の上での特徴か。