いつもの散髪屋に出掛けた。この歳になって服装はオシャレもクソもないが清潔感だけは大事にしている。髪の毛も耳にかかるようになると気になってしまう。散髪屋でちょっと変だなと思ったのはいきなり髪の毛を摘んで右か左のどちらですかと聞く(分け目のこと)。分けるほど長くはないだろうと思うのだが。勤めていた頃は7:3分けで如何にもサラリーマン風だったが年が行くと梳かなくても清潔感が出る永六輔風を装った。何時も短めに、バリカンを使っても構いませんという合言葉で始まるのだが。いや短めに・・・と言い始めると顔を思い出したのか照れくさそうに始める。暫くすると手が止まったので薄目を開けてみると鏡の前に並んだ20本くらいの鋏のどれを取るか迷っているようだ。おいおい馴染みの客ではないか。しかも注文を出すことなどないお決まりのコースを所望しているのだ。頭を過ったのは認知症?。いやいや自分より10歳は若い。そんな筈はあるまい。何年か前に奧さんを亡くして今は息子さんと二人暮らしをしている。もし何か異変があったとしても周りから注意してくれる人はいないかも知れない。カミソリも使うよなあなどと心配もした。洗髪の時は手でぬるま湯を確かめてから始めるのだがこの日はいきなり冷水だった。その内ぬるま湯になっていったがどうも変だ。さらに毎度当たり障りのない他愛のない話をしかけてくるのだがそれも無言のまま。何とか手順通り終わったがやっぱりおかしい。虫の居所が悪かったのか心配事でもあったのかも知れない。しかし身の上相談に乗るほど親しいわけでもない。もう店を変える気はないので元気を出して最後まで面倒見てよと思いながら店を出た。
最近芸能界でも不幸なできごとが相次いでいるが、本人からは何らかの信号は出ている筈である。周りの誰かがそれをキャッチできるかどうかで結果は大きく変わってくる。自分のことは自分が一番分かっているというのはあまりあてにならない。周りが客観的に見て異常に気付くことは間々ある。自戒の念を込めてそう思う。
最近芸能界でも不幸なできごとが相次いでいるが、本人からは何らかの信号は出ている筈である。周りの誰かがそれをキャッチできるかどうかで結果は大きく変わってくる。自分のことは自分が一番分かっているというのはあまりあてにならない。周りが客観的に見て異常に気付くことは間々ある。自戒の念を込めてそう思う。