太陽光発電シニア

太陽光発電一筋、40年をはるかに過ぎたが何時までも興味のつきない厄介なものに関わってしまった。

目標の設定だけでは無理である

2020-12-22 08:50:29 | 社会観察
 2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にする政府目標実現に向け今度は自治体が作成する地球温暖化対策の実行計画に再エネの導入目標の設定を義務付ける方針を固めたとのこと。もう先祖返りと言う他ない。「目標値を決めることが義務」なのである。もう20年近く前だが幾つかの先進的な自治体が「新エネ(再エネ)導入計画のFS(可能性調査)」を委員会を立ち上げて検討した時期がある。地元県でも委員会が立ち上がり著名な学者などの参加もあり結構大規模な委員会が設置された。民間の関係者ということで小職も委員として参加した。計画自体は積極的かつ建設的なものが出来上がりこれで幾らかでも導入は進むと思っていた。ところが実行は遅々として進まなかった。幾つかの自治体でも同じような状態だった。県の職員や中央省庁の役人なども参加していたので期待はしていたのだが立派な報告書が出来上がっただけである。問題点は2つある。県の主催は関係のある部局が行い必ずしも議会を通る(法制化や予算措置など)とは限らない。もう一つは可能性調査(Feasibility Study)が目的であり実行は別問題だった。
 その後、国ではRPS制度やFIT制度が実施されある程度再エネ導入は進んだが未だ2050年までにGHG排出ゼロ目標には程遠い。逆にFIT制度による電気料金値上げが国民負担になるというネガティブキャンペーンがマスコミを通じて大々的に繰り広げられFITの主役である太陽光発電は諸悪の根源にされてしまった。今更であるが「目標値設定の義務化」自体が最終目標であるならば実行に関しては轍を踏むことは間違いない。2050年は先のように思えるが環境を変えるのは金(予算)をつければ即可能という訳には行かない。2049年に手を打って2050年に実現できる類ではない。時間が掛かるのである。
 RPS制度の頃、業界団体から政策提案をを幾つか資エ庁に提出したことがある。RPS制度は電力小売り(当時なら電力会社)業者に導入の義務量(Quota)を課し国の目標値を達成しようとしたものである。幾つかの理由でRPSはFITに代わっていったがRPSは義務という強力な縛りがあり計画経済のように目標達成の可能性は高い(義務を課せれるところが反対するのは分かっていた)。業界の提案はクォータを課す相手を自治体単位にしたらというものだ。自治体毎に電気の出入りは差がある。東京などはもっぱら消費地で他府県に立地されている発電所から電気を送って貰っている。発電所立地県は消費より他県への送電が勝る。森林の多い県はGHG抑制に貢献しているからその分義務量は相殺すべきである。義務が達成できない所は義務量を超えて達成した県から買い取る。これは発電所立地県や森林の多い(田舎)ところと大都市間の経済的均し効果もある。今更環境省がカーボンプライシングを言っているが20年も前に散々検討された話である。実現しなかったのは産業界という反対勢力が強力だったからである。2050年目標に向けて洋上風力発電が随分期待されているようだがこれも経済性と寿命(メンテナンス含む)の点で上手く行かないだろう。可能性があるのは何度かブログにも書いたが洋上(筏)太陽光発電である。要素技術は殆ど完成している。台風の進路に当たれば小分けして曳航し回避させれば良い。筏の形を工夫すれば養殖筏にもなる。漁礁になりそうなものをぶら下げれば筏の安定にも繋がり筏周辺は漁場にもなるる。筏にスクリューを設置し発電した電気で回して自走できるようにしたら遠隔操作も可能になる。場合によっては災害地近郊の海まで曳航し陸上に給電すれば非常用発電にもなる。洋上筏発電を様々なアイデアを募って提案したらどうだ。造船会社など新規事業にはうってつけと思うが。40年近く前水素学者で有名な教授が提案した洋上太陽光発電で電気分解、水素を製造してタンカーで運ぶなどということもその次の50年では実現するだろう。洋上風力の送電ケーブルは筏発電でも使えるから全く無駄にはならない。いずれにせよ今頃目標値の設定の義務化というのはあまりに遅い。ホップ、ステップは過ぎている。今はジャンプの時である。言うまでもなく公海上で国際宇宙ステーションのように洋上太陽光発電所を国際協力で建設することも可能である。中国で生産過剰になれば自国のエリアに増設すれば生産調整にもなる。マイナス要素を思いつかないのは依怙贔屓かも知れないが。