ジローのヨーロッパ考

デンマークやドイツの農家に長期(?)滞在、体験したり感じたことを綴ります。

ドイツでの農場体験(17) <新しい「島型」畑作り >

2014-03-11 21:10:53 | 日記
10月7日(月)、今日は珍しくいつもと異なる作業を行いました。奥さん(Eさん)が主な担当になっているらしいのですが、庭に新たな畑を作るのです。これはフランス人カップルの二人と私、それにEさんの4人で行うことになったのです。

この畑は自家栽培用としては参考になるものではないかと思います。一番の特徴は作業位置です。立ち作業の格好で作業できるので、農作業としては楽ではないかと思われます。次は、木製の廃材パレットを利用していることでしょう。それを枠にして高さがおよそ80cmぐらいの長い「島」のような形状の畑にしているのです。百聞は一見に如かずで写真を先に見て下さい。
(写真: 半分ぐらい出来上がった状態)

例えば、最初にパレットを6枚使って枠を作ります。木製パレットには隙間があるのでそこから土が流出しないように、透水性のあるシートをその枠の内側に敷き詰めます。木枠への固定はホッチキスのような釘を専用の工具でパチンパチンと打って行くだけです。ここまでできれば後は枠の内側に土を入れるだけですが、この農家の場合はマッシュルーム栽培で不要になった菌床が乾燥して保存してあるので、下半分はその菌床を土の代わりとして入れて行きます。その上は庭に作ってあるコンポストから堆肥を運び入れるのです。
(写真: ブロック状のものは乾燥した菌床)

ちなみに、そのコンポストは枠で囲われたようなものではなく、庭の隅に小山のように作られているのです。恐らく年単位ぐらいでその小山をシフトしているのです。肉類を除く野菜中心の残材やマッシュルームの不要部分、葉っぱや草等が主な原料(?)になっています。十分に発酵・分解したものは土に近い状態になっており、それを新しい木枠の畑に投入して行くのでした。
(写真: 庭の隅にあるコンポストの小山)

既に1列目は完成して畑として使われており、私たちが新に作るのは2列目となるのでした。ここには自家用の野菜が植えられる筈です。このハイポジション作業の島型畑はグッドアイディアだと思います。種蒔きや定植、追肥、草取り、収穫等、いずれの作業においても腰をかがめることはほぼ不要なのです。

私の知人が言っていたことがあります。かつて、イチゴ栽培を大々的にやっていたのですが、その農作業たるや「殺人的」であったと。つまり通常の畑の状態で栽培すると、苗を定植したり、イチゴを選別して収穫する際にも、しゃがみ込んでの長時間の作業を強いられることになり、それは過酷な労働であったと聞かされました。

そうしたことを考えると、この廃材パレットを利用した島型畑は実にすばらしいと思うのです。但し、自家用栽培が中心の規模であれば実現は比較的容易と思いますが、販売目的で大々的に栽培する向きには合わない方法かと思います。それにしても、近在の地域が商圏で、いわゆる一定の地域内での地産地消を想定した規模の有機農法等を目指す場合は、これに類似した方法でもよいのではないかと思うのです。

この作業は後日も続けられ、1列目と同様の長さにまで2列目も完成したのです。
(写真: 完成した2列目)

さて、この日の夕方は10月末からのドイツ国内移動のための列車チケットを購入しに行きました。ラーデンの街中にあるチケットセンターで買います。移動ルートは以下を決めました。最初はラーデンから北方のブレーメン(3泊)へ、そしてさらに北方のリューベック(3泊)へ。最後はドイツ中部にあるフランクフルト(3泊)へ向うルートです。これらの列車はインターネット上のドイツ鉄道(DB)のサイトで全て調べることができるので、時刻も列車名も、そして料金も予めわかるようになっています。
(写真: ラーデンのチケットセンター)

日時や発駅、目的地等をメモしたものをチケットセンターの係りに見せてチケットの購入です。15分ぐらいで全て発券してくれました。しかも驚いたのは、私の事前の試算では170ユーロぐらいになるのですが、なんと92ユーロで済んでしまったことです。利用の3週間ぐらい前での発券と言うこともあったのかも知れませんが、その安さに驚きました。

この農場での生活も残り3週間ほどになってきました。一生に何度も経験できることではないので有意義に過ごして行きたいと改めて考えていました。
~続く~


ドイツでの農場体験(16) <ミッテルランド運河までサイクリング >

2014-03-11 17:10:20 | 日記
2013年10月6日(日)、今日は久しぶりのサイクリングです。ラーデンの南方13kmぐらいの所にあるミッテルランド運河(Mittelland kanal)を目指します。途中、フィエステル(Fiestel)にある古い水車も見る予定なのです。

この日の天気は曇り時々晴れ、気温は朝8℃、昼は15℃の予報でした。やや暖かめの気温のようですが、自転車では少し寒い感じもするので手袋をはめてのスタートです。途中までは何回も走っている道なので迷うことはありません。そして、半分ぐらい来たところから初めてのルートに入ります。ここからはほとんど一直線に近い道なので、地図はなくとも不安はありませんでした。但し、ちょっとした地域の幹線道のようなイメージなので、走行する車そのものは多くはないのですが、時折、時速100kmオーバーぐらいのスピードで車が追い越して行きます。郊外のこうした場所では、ドイツ人はスピードを出す人が結構多い印象ですね。但し、ラーデンのような市街地内では、そのような車は見かけたことはありません。
(写真: フィエステル方向を示す標識)
(写真: 追い越して行く車)

それにしても農地(耕地)は広いです。もちろん、日本と比較しての印象ですが。1時間ぐらい走るとフィエステルの水車の場所に着いたのですが、どうも個人宅のような建屋で、一般人が入れる雰囲気ではないのです。しかも水車も見えていないし、それを示す表示や案内もないので中に入るのは諦めました。
(写真: 広い刈り取り後のコーン畑)
(写真: フィエステル到着)

気を取り直してさらに進みます。そこから2kmほど行ったところにミッテルランド運河があり、10分程度で到着しました。運河に架かる橋の上から運河を眺めます。確かに人工的であるためどちらの方角を見ても、多少の曲線は描いているようですが「直線的な河」なのです。東方から西方に向って一隻の船が通って行きます。
(写真: 運河を航行する船)

ホストのOさんがこの日のサイクリング前に言っていました。ミッテルランド運河まで行っても何もないよ・・・と。確かに人工物なので自然の造形美とは異なる印象でした。この橋で折り返しです。
(写真: 運河に架かる橋)

帰り道、往きには寄らなかったのですが、フィエステルの近くにある木組みの美しい家に行ってみました。この地方には所々にこうした木組みの家が残されているようです。8月、ケルンから日帰り旅行で行ったフロイデンベルクの木組みの家が、配色の上で白と黒のツートンカラーで統一されていたのとは違い、この辺りで見かける木組みの家は、それぞれが個性を強調しているようでもありました。
(写真: フィエステルの木組みの家)
(写真: エントランス)
(写真: フロイデンベルクの木組みの家群)

来た道を戻って行きます。場所によっては落葉が黄色になっていて「秋」を感じさせるのでした。そう言えば1週間前(9月29日)のハーメルンに日帰り旅行した時も、同じように秋の気配を感じていたのでした。そして順調におよそ1時間半でラーデンに戻ることができました。この日は4時間ほどのサイクリング、体を動かすことはいいことですね。
(写真: 秋の気配が・・・)
(ラーデンの市街地)

おまけの話になってしまいますが、この日の帰りに滞在先である家の前で小さな発見(?)がありました。それは自宅前の歩道が工事中なのですが、その工法を見て驚いたのです。写真は家の前の側溝部分です。コンクリートブロックではありますが、一つ一つを並べて施工しています。別の写真はミュンスターで撮影(8月)したものですが、歩道部分を施工しているものです。やはり小さ目のコンクリートブロックを並べています。日本ならばどうでしょうか、昨今は同様に小ブロックを敷き詰めた歩道を見ることもありますが、どちらかと言うと、コンクリートを流したり、アスファルトで舗装と言うのが多く見られるのではないでしょうか。ドイツのあちらこちらで見かけたこの施工方法は、間違いなく手間隙がかかっているのでコスト的にも高いと思われるのですが、一種の伝統なのでしょうか。
(写真: ホストの農家前の工事中側溝)
(写真: 8月に訪れたミュンスターの歩道)

色々な場面で価値観の違いを感じることがあるのです。明確にその差異がどこにあるのかは認識できていない私なのですが、「経済」「効率」「コスト」「金儲け」に軸足を置いているかのような日本にしばしば見えてしまうのです。
~続く~