昨日あなたは
ちょっとした間違いをしましたね
そう この木は言っています
本当は真っすぐいかなきゃ
いけなかったのに
間違えて道をそれてしまったと
木の声が聴こえるのかですって
そういうわけじゃあないのですけど
とにかくこれから
あなたは少しずつ魂が傾いてくる
そう木は言っています
だから注意するようにと
木が人間のように話す声が
聴こえるというわけではないんですよ
ただ
魂の奥の奥の広がりには
人間も木も動物も風も星も
全て同じになれる国があって
私たちはいっしょに
そこに入っていくのです
そしてそこから帰ってきた時には
木の言葉は私のものになっているし
私の言葉も木のものになっているのです
そこでは言葉は
目に見えぬ理屈やただの記号ではなくて
一枚の透明な布や
奇麗な光る色石だったりするのです
本当なのになあ
(2003年、花詩集6号より)