珍しい絵ですね。これはメソポタミアの神話をテーマにしたものです。
英雄ギルガメシュはその好敵手獣人エンキドゥと友情を結ぶが、その友人に先立たれて悲しんでいる。そういう図です。
かのじょがいってしまったあとの、シリウスの気持ちとはこういうものではないかと。そう思ってあげてみました。
好敵手というか。この世界で、ただひとり自分をわかってくれていたものが死んでしまうということは、とてもつらいことにちがいない。彼は何も言いませんが。
生きていた頃、北国の田舎に、ひとりのおかしな人として生きていたシリウスに、あなたは本当にすばらしい人なのだと言って、心を尽くしてくれたのは、事実上かのじょだけでした。
かのじょは知っていた。もし自分のことも本当に理解してくれる人がいるとしたら、きっとそれは彼だけなのだと。
彼もわたしも同じように、世間からはじきとばされたおかしな人として生きざるを得ない。まことの自分を通して生きようとすれば、そうなるしかない世界を生きていた。
傷だらけになりながら。
この世では一度も会うことはなかったが、魂の世界では互いを知り抜いている。
そういう人が死んでしまった。
もう二度と帰ることはない。
神話では、ギルガメシュはエンキドゥの死んだあと、自分も死ぬのではないかと恐れて、不死を求めて旅をするのです。そして不死となる方法を得たかに見えたが、それを蛇に奪われて空しく帰郷する。
シリウスはギルガメシュのように愚かではない。不死などばればれの嘘なのだと知っている。だが、かのじょの死が彼に何の影響も与えないはずはない。彼はかのじょが死んだあと、何をするつもりなのか。
知らないほうがいいでしょう。