世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

自分らしい

2019-07-26 04:50:22 | 詩集・絹の鎖

ああなりたいこうなりたいと
思うたびに
らしくないことばかりやるのが
馬鹿というものです

本当の人間は
ただ自然に自分をやるだけで
自分らしいというものですが
馬鹿は人まねばかりして
それをむやみに磨き上げて
人に見せびらかしているのです

自分らしいのがいい
自分らしいのがいい
そうわらいながら
全然自分らしくない
馬鹿な人生を生きている

それはそれは上手に
人まねをして
全然自分とはちがうものになっている
馬鹿ですよそれは
もう人間はみんな
本当の自分の世界にいってしまうのに

ひとのまねばかりして
らしくないことばかりやって
冷たい目で見られているのに
まだやっている
まだやっている
まだやっている

かたつむりみたいに
自分の世界に閉じこもって
いつまで
自分らしい自分ていう
偽物を生きてるの





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未熟者の見本

2019-07-21 04:38:21 | 言霊ノート


人に頭を下げて、人の下になって、失うものなんて、たいしたものじゃないんだよ。それで得られるものの方が大きいんだ。人に謝ることのできないやつは、そんなことをしたことがないから、これがわからないんだ。人に謝ることもできず、偉そうにしてばかりいる馬鹿は、未熟者の見本みたいなものだ。

アンタレス





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変な女

2019-07-07 05:00:36 | 言霊ノート


勉強をして、心を整えていかねば、目や表情が美しくならないんだよ。霊魂が高くなってくれば、心が澄んでくる。そうすると、やさしい女になってくるんだ。こわいほどきれいになってくる。そういう自分になる努力もしないで、他人から顔などの表面的なことばかり盗んで、勝手に美人になるから、とんでもなく変な女になるんだよ。

アンタレス





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燕の子⑩

2019-07-05 04:47:45 | 夢幻詩語



気が付くと、千秋は洗濯籠を抱えたまま畳の上に倒れていた。夢とうつつの間で混乱しながら、千秋はよろよろと起き上がり、電話の方に行った。受話器を取ると、耳に刺さるような幼稚園の先生の声が飛び込んできた。

「おかあさん! 真夏ちゃんが!!」

はっと我に返ると、千秋は受話器を抱え込み、言った。
「真夏が? どうかしたんですか?」

それからのことは、わけがわからなかった。とにかく、真夏が事故にあって救急車で運ばれたということだけはわかった。

「うそ…、なぜ事故なんか……」
へなへなとそこに座り込みながら、千秋は言った。泣き叫ぶような声で、先生は答えた。
「砂場で遊んでいたら、フェンスの向こうから暴走車が突っ込んできたんです! みさこちゃんはかすり傷で済んだけど、でも真夏ちゃんが!!」

インターバル、インターバル、インターバル……、頭の中で、声にならない叫びがぐるぐると回っていた。千秋はとにかく電話を切り、マンションの外に飛び出して、幼稚園の方に走った。

返さなくちゃいけないんだよ、返さなくちゃいけないんだよ。あの子はおまえの子じゃないんだ……。

黒い人影の声が、頭の中によみがえった。いやだ、失いたくない。真夏はあたしの子なのよ。あたしが生んで、お乳をやって、あたしが育ててきたのよ。

米屋の曲がり角のところで、千秋は何かにつまずいて勢いよく転んだ。すりむいた手のひらをなめながら、涙があふれ出た。そのとき、また燕が視界を横切った。

真夏!!

飛び去っていく燕を、呼び戻すように、千秋は叫んだ。


(了)





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燕の子⑨

2019-07-04 05:07:18 | 夢幻詩語



千秋は見知らぬ街を、歩いていた。

ここはどこだろう。ずいぶんと暗いところだ。空を見ると、太陽らしきものが中天に見えるのに、まるで夕暮れのように薄暗い。

道の隅には生え群がった雑草のかたまりがあって、それがかすかに風にゆれていた。足取りは重いのに、体は妙に軽い。いや、まるで重さなどないかのように、ふらふら千秋は歩いていた。

「やあ、きたのかい」
いつの間にか千秋は、小さな薄暗い部屋の中にいた。そこには、黒い布を頭からすっぽりかぶったあの人がいた。
千秋は、ああ、と言った。思い出してはならないことを、思い出しつつある。

「来るような気がしてたよ」
黒い布をかぶった人は、ため息交じりに言った。その声にかぶさるように、千秋は言った。

「あたし、今度生まれるの」
「ああ、知ってるよ」
「それで、やってほしいことがあるの」
「やっぱりね」

インターバル、インターバル、インターバル、という絹子の声が、耳の中で繰り返し鳴った。そうだ、わかる。これはインターバルの記憶なんだ。生まれる前の、あの世にいたころの、あたしの記憶なんだ。

「あたしね、今度の人生で、いやな子を産まなきゃならないのよ」
「ああ知ってるよ。前世で子供に馬鹿なことをしたからだろう」
「ちょっと厳しくしつけただけよ。それがあんな変なやつになると思わなかったのよ」
黒い布をかぶった人は、深々とため息をついて、かぶりを振った。千秋はつづけた。

「だから、子供をほかの子供ととりかえてほしいの」
「そりゃ、できるけど、やったらいやなことになるぜ」
「わかってるわよ。でもあたし、子供で苦労なんてしたくない」
「復讐されるのが怖いんだろう」

千秋は黙った。目に少し涙がにじんだ。自分の言っていることは、明らかに違反なのだ。裏から操作をして、自分の人生をいい方向に導いてほしいという願いなのだ。

「もちろん、ただじゃないわよ、それなりのことはするわ」
「まあいいけどね、でもうまくいくとは限らないぜ」
「いい子が欲しいの。すごくいい子が欲しいの。だからとりかえて」
「ほんとの子の方が、どんなあほでもいいっていうぜ」
「いやなものは、いやなのよ!」

もういい、やめて、と自分の中で自分が言った。千秋は思い出したのだ。生まれる前の約束。確かに自分は、誰かにこんなことを頼んだ。

本当は、自分は子供で苦労するはずだったのだ。前世で子供を虐げたからだ。子供は病気で生まれて、一生その世話をしなければならないはずだった。それがいやだったから、裏から操作して、子供を違う子供ととりかえてくれと、誰かに頼んでから、千秋はこの世に生まれてきたのだ。

そんなことが、すらすらとわかった。

「思い出したかい」
ふと、風景が変わり、まわりが真っ暗になった。あの声は言った。
「あの時約束したけどね、もうそれがだめになったのさ。もうあの子は、返さなくちゃいけないんだよ」
「それ、どういうこと!?」
千秋は叫ぶように言った。すると声の主は一瞬ためらった後、静かに言った。

「…業なんだよ、おまえの。どうしても、子供でつらい思いをしなきゃならないのさ」
「いや、いやよ!!」

そのとき、どこからか電話の音が鳴り響いた。





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燕の子⑧

2019-07-03 04:56:29 | 夢幻詩語



その日も、千秋は夫と真夏を明るく送り出した。暦はもう七月に入っていた。もうすぐ真夏の誕生日だ。

ピンクのバラがついたケーキを頼んでおかなくてはならない。それよりなにより、誕生日のプレゼントを何にするべきか。千秋は家事をてきぱきと片付けながら考えた。ピンクのワンピースはどうだろう。真夏はピンクが好きだ。でも、デザインに結構うるさいから、千秋が買ったものに文句をつけるかもしれない。ぬいぐるみか何かのほうがいいかしら?

千秋は洗濯籠を持ってベランダに出た。燕が飛んでいる。あの燕の子はもう巣立っただろうか。あたしも燕のように、真夏の世話をして、育てるんだ。千秋は幸せそうに笑いながら、真夏の小さなTシャツや靴下を干した。なんでもしてやりたい。娘のために、なんでもしてやりたい。こんなに子供を愛することが幸せだなんて、真夏が生まれるまで知らなかった。

きっとすごくかわいい娘になる。千秋は真夏の将来を想像して、ひとり微笑んだ。今は元気に飛び回っている真夏も、年頃になればおとなしくなってくるに違いない。どんな娘になるだろう。お嫁に行く時には、夫がどんな顔をするかしら。

千秋の想像の中では、美しく成長した真夏が明るく笑っていた。ふと、あんないい子には魔がつきやすい、などという絹子の言葉が浮かんできた。

洗濯物を干し終わって、中に入ると、千秋はぶんぶんと顔を振って、暗い考えを振り払った。ばかばかしい。絹子はSの影響で妙に迷信深くなっているのだ。霊感なんて、きっと詐欺みたいなものよ。みんなだまされているのよ。

「そうでもないさ」

そのとき、また後ろから声がした。千秋は心臓をぎゅっとつかまれるように、驚いた。だが振り返らなかった。振り返れば、またあの人影を見る。

「いろんなやつがいるがね、馬鹿にしたらまずいやつもときどきいるんだよ」

千秋は答えなかった。洗濯籠を握りしめながら、凍り付いたようにそこで固まった。

「もうそろそろおしまいなんだ。それを教えにきたんだよ、俺は」
「おしまいって何?」
千秋は思わず言った。すると声はひくひくと笑いながら、答えた。
「あの子はね、おまえの子じゃないんだ。だからもう、返さなきゃならないんだよ」

頭に血が上った。千秋は妙な叫び声をあげながら、振り返った。それと同時に、何かに吸い込まれるように意識を失った。





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燕の子⑦

2019-07-02 04:46:50 | 夢幻詩語



翌々日は日曜日だった。千秋は真夏を夫にまかせ、絹子について、講演会に行った。

Sというのは、この地方で活動している、けっこう有名な霊感師だった。絹子は車の中で、Sについていろいろと説明した。もとはある神社の禰宜だったそうで、ある日神からの霊感を受けて、霊能者としての力が開け、不思議なことがわかるようになったという。

千秋は心の中で眉に唾をしながら聞いていたが、心の半分では何かを期待していた。夢のことなんか、相談してみようかしら。でもきっとお金がかかるわ。変な宗教にひっかかったらいやだし……

運転をしながら、インターバル、という言葉が、千秋の胸の中である種の痛みを伴って、繰り返されていた。

会場は大学の講義室のようなところだった。結構盛況で、座る席に困るほどだった。一番前の席しか空いてなかったので、千秋と絹子はそこに座った。

「やっぱり人気があるのねえ、こんなのだとは思わなかったわ」
絹子のそわそわした声に、千秋は少し苛立たし気に答えた。
「どんなだと思ってたの?」
「もっと、古そうなところでやると思ってたのよ。お寺のお堂みたいなところで。前に相談したときはそんなとこだったし。でも今度はずいぶんと近代的ねえ」

話しているうちに、壇上にSが現れた。

千秋は、ぼんやりとSを見た。Sは五十がらみの男で、こざっぱりとしたスーツを着ていた。

講演の内容は、ほとんど右から左へと聞き流した。時々、インターバル、という言葉が耳をついたが、それにもあまり深入りしないようにした。ちょっとでも興味を持てば、魂を吸い込まれるような気がしたのだ。何かを期待してここに来たんだけれど、やはりいやらしい宗教家の洗脳など受けたくない。隣の席を見ると、絹子が熱心に耳を傾けている。千秋は小さくため息をついた。

霊感師というより、まるで実業家みたい、みんなだまされてるんじゃないかしら、と思いながら千秋は壇上のSを見上げた。そのとき、千秋はSとふと目があった。千秋はすぐに目をそらしたが、Sのほうは、何かに気が付いたように、千秋に声をかけた。

「やあ、これは、そこの奥さん」
え?という顔をしながら、千秋はふたたびSを見た。Sは少し苦しそうに眉を寄せて、言った。
「奥さん、お子さんがおありですね」
「は、はい、おりますが」
千秋はどきりとした。霊感師に意味ありげに呼び止められるなんて、あまり気持ちのいいことではない。

Sはしばし、千秋を見つめて、何かに悩むような表情をした。そしてしばらく沈黙したあと、言った。
「お子さんに気をつけてあげなさい」

千秋は目をぱちくりした。Sはすぐに目をそらし、元の話に戻った。となりで絹子が、茫然と千秋の顔に見入っていた。

「あんた、ちょっとまずいかもよ」
帰りの車の中で、絹子が千秋に言った。
「まずいって何?」
「何か見たんじゃないかしら。あんな人に相談するのにはね、それなりのものがかかるのよ。でも今日は、向こうから言ってくれたわ。たぶん、あんたに何かあるのよ」
「何かって?」
「とにかく、真夏ちゃんに注意してあげなくちゃ。あんないい子には、魔がつきやすいっていうしね」
「魔がつきやすいって……!」
「信じられないくらい明るい良い子よね。あんたが生んだのとは思えないくらい」
わたしだって時々そう思うわよ、という言葉を千秋は飲み込んだ。夢であの人影が言ったことを、思い出した。

あの子は、おまえの子じゃないんだよ……

そんなことあるもんか。真夏はあたしの子よ。あたしがちゃんとこのおなかをいためて、生んだのよ。

千秋は真夏を生んだ日のことを思った。あれは日差しのじりじり暑い夏の日だった。大きなおなかを抱えて、近所のスーパーに買い物に行く途中、突然陣痛が来て、産院にかけこんだ。それから二日ほども苦しんで、千秋は真夏を生んだのだ。

そうだ。どう考えても真夏はあたしの子よ。

しかし、夢の中のあの声は、ある種の現実感を伴って、千秋にからみついてくる。千秋はあのときSにもっと踏み込んで尋ねてみればよかったと、いまさらながらに後悔した。





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燕の子⑥

2019-07-01 04:39:54 | 夢幻詩語



夫と真夏を送り出し、台所で食器を洗いながら、千秋はかすかな偏頭痛を耐えていた。調子が悪いのは、雨のせいだろうか。いや、夢のせいだ、きっと。

洗濯物を部屋干ししながら、千秋は部屋の隅を見た。確か黒い影はあそこにいた。

千秋はブルっと身震いをした。夢のことを思い出すと、今もあの人影がそこにいるような気がした。

「気のせいだ。気のせいよ」千秋は自分に言い聞かせながら、無理に心を明るくしようと、テレビをつけた。お昼前のヴァラエティが賑やかにあらわれた。

ぼんやりとテレビを見ているうちに、気分は少し晴れてきた。外の雨もいくぶん小やみになってきた。そろそろ真夏を迎えにいかねばならない。千秋は立ち上がった。そのとき、耳に錐が入ってくるように、確かに、あの声が聞こえた。

「おまえ、あの子、おまえの子だと思ってるのか」

振り向くと、またあの人影が、部屋の隅にいた。千秋はすうっと息を吸い込んだ。悲鳴をあげようとしたが、無理にそれをとめた。ここは冷静になるのだ。これは夢だ。また夢を見ている。たぶん、テレビを見ているうちに、また眠ってしまったのだ。

そんなことを考えながら、千秋はくぐもった声で言った。

「あんただれ? なんでいつも夢に出てくるの?」

すると人影はクックッと、しばらく笑いをひきずった。そして言った。
「あんた、俺と約束したんだよ。生まれる前に」

「生まれる前に?」
「そう、インターバル……」

千秋の頭の中で、絹子のことばがぐるぐるよみがえった。前世とこの人生の間に、あの世でいる期間のことを、インターバルっていうのよ……

「思い出せよ。おまえ、生まれる前に、俺んとこに来ただろう。それで、頼んでいっただろう……」
「知らないわよ、そんなこと!」
「知らないはずはないさ。今は覚えていないだけだ。おまえはね、俺んとこきて、頼んでいったのさ。子供をとりかえてくれって」
「何それ?」

聞いているうちに、千秋は胸がむかむかしてきた。頭の奥で、火花のようなものがばちばちと音を立てている。

「おまえの好きなあの子、あの子はね、ほんとはおまえの子じゃないんだよ。おれが、とりかえてやったのさ」
「うそ!!」

千秋は叫んだ。それで目を覚ました。

やはり、眠っていたのだ。テレビの向こうから、白けた笑いが聞こえた。千秋は起き上がると、例の部屋の隅を見た。雨の音が聞こえる。それが何かのささやき声のように聞こえて、千秋は耳を伏せた。

そのとき、また電話が鳴った。飛びつくように電話をとると、絹子の声が聞こえてきた。
「ああ、千秋? この前言った講演会のことだけど……」
千秋はしばらく答えられなかった。絹子は構わず、話をつづけた。講演会は明後日あるらしい。よければ車を出して載せていってくれないかという話だった。
千秋は少し迷ったうえで、いいわ、と言った。宗教みたいなことにはかかわりあいたくなかったが、夢のことが気になっていた。





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