世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

モクレン

2024-05-07 02:43:03 | 季節の花詩画集

白いモクレンの花びらで
地球をつつんで
赤子をあやすように
少し揺らしたら
ほうら 春がやってきた

めぐりめぐる
季節の約束を守るために
大地を転がす
神様の大きな手が見えたなら
清らかな鈴を鳴らして
みなで愛を歌おう




***
(絵は2006年、詩は2024年スピカ作)





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ナノハナ

2024-05-06 02:31:17 | 季節の花詩画集

喜びはあふれる金の氾濫です
氷の悲哀に閉じ込められていた
何千何万の金の鳥が
いっせいに空に飛び立つように
わたしたちは進軍する光の波
もうだれも止めることはできない

きりきりとかじかんでいた歌が
溶け出して世界を鐘のようにかき鳴らす
わたしたちは春の進軍




***
(2006年3月)





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ツバキ

2024-05-05 02:57:19 | 季節の花詩画集

目をとじて 耳をすまして
わたしたちの ささやきが
硬い空気の向こうで
まどろんでいる
春の耳をくすぐるの

おしよせてくる予感の
行く道を導いていく
わたしたちは森のともしび
小さな 赤いともしび





***
(2006年2月)





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ウメ

2024-05-04 03:05:47 | 季節の花詩画集

岩のように硬い冬の心を
ほほ笑みで解かしてゆくのが
わたしたちの仕事です
わたしたちには 剣も盾もない
あるのは ほほ笑みだけ

どんな雪風に拒絶されようとも
わたしたちは咲きます
声なき声の春の 最初の一画を
空に書くために





***
(2006年1月)





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シクラメン

2024-05-03 02:42:09 | 季節の花詩画集

心配せずとも わたしたちは
世界の秘密に深く加担しています
星々がいつも空で泣いているのは
わたしたちのことが忘れられないからです

この塵くずのような青い星の片隅の
舞い落ちるともしびのようなその花の
ひそやかな吐息さえ逃さないほど
星々はいつも
わたしたちを見つめているのです





***
(2005年12月)





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モミジ

2024-05-02 03:11:31 | 季節の花詩画集

風が季節の鈴を鳴らして
わたしたちに秋の器をかぶせました
日は少しずつ遠のいて
ひいてゆく波のように
時が頬をなでてゆくのです

わたしたちが恥じらうのは
眠りにむかってゆく大地への
秋の青年のまなざしが
たいそう おやさしいため





***
(2005年11月)





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シオン

2024-05-01 03:21:14 | 季節の花詩画集

森の中で 探してください
あなたがかつて
石の棺にとじこめた
歌を歌う星の夢を
私は森に解き放っておきました

森の奥で 探してください
それが季節の風のとりことなって
大地の深い眠りの中に
溶けて消えてしまわないうちに





***
(2005年10月)





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コスモス

2024-04-30 02:52:07 | 季節の花詩画集

わたしたちはみな
ひとりひとりちがいます
色も形も 笑い方も歌い方も

透明な風の後ろで
金の時計のネジを巻いている
あの美しいお方が
わたしたちをそう創ってくださり
秋を 澄んだ紅の合唱で
始めるようにとおっしゃいました





***
(2005年9月)






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ヒマワリ

2024-04-29 03:07:43 | 季節の花詩画集

昔 世界中の幸福を切り砕き
ありもしない真珠を求めて
死に絶えた貝殻を集めていた

今 私の中で目覚めた太陽は
金色の翼を広げて空に唄い出す

天の下 天の下 天の下

私が 私で あること!





***
(2005年8月)





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アサガオ

2024-04-28 03:27:54 | 季節の花詩画集

虫取り網をもって
風のようにかけていく少年の肩に
青い朝顔の眼差しがついていった

一日を子犬のように遊び倒して
日が暮れて
ふと誰かに会いたくなったのは
そのせいだということに
少年はいつ気づくのだろうか





***
(2005年7月)





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