民はこれに由らしむべし。これを知らしむべからず。
人民は君主自身の徳行によって感化し、それによって導いてゆくべきだ。いくら正しいことでも、無理におしつけると人民は反発して何もやろうとはしない。
(論語・泰伯)
吾れ未だ徳を好むこと色を好むが如くする者を見ざるなり。
(論語・子罕)
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みだらな思いで他人の妻を見る者は誰でも、すでに心の中でその女を犯したのである。もし、右の目があなたをつまずかせるなら、えぐり出して捨ててしまいなさい。
(マタイによる福音書)
私は不思議でたまらない、
黒い雲から降る雨が、
銀にひかっていることが。
私は不思議でたまらない、
青い桑の葉たべている、
蚕が白くなることが。
私は不思議でたまらない、
たれもいじらぬ夕顔が、
ひとりでぱらりと開くのが。
私は不思議でたまらない、
誰にきいても笑ってて
あたりまえだ、ということが。
(金子みすゞ)
悲しみよ、苦しみよ、わたしの前に現れる、すべての試練よ。あなたはわたしの、親族です。腕を組み、ともに歩きましょう。誰を責めることなく、わたしはあなたを受け入れましょう。すべてを耐えていきましょう。苦しみは長い。痛みは続く。傷つける鞭は、繰り返す波のように絶えることはない。だが生きてゆく。わたしは正しい。それが幸福だ。試練よ。わたしはあなたの友です。
(青城澄「星の掲示板」)
「よろしい。しずかにしろ。申しわたしだ。このなかで、いちばんえらくなくて、ばかで、めちゃくちゃで、てんでなっていなくて、あたまのつぶれたようなやつが、いちばんえらいのだ」
(宮沢賢治「どんぐりと山猫」)
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いちばん先になりたい者は、すべての人の後になり、すべての人に仕える者になりなさい。
(マルコによる福音書)
一番偉い人は、影でみなのために、いいことをコツコツとやってくれている人だ。
上に立ってふんぞりかえって、人をこき使って自分は何もしない人は、結局馬鹿なんだよ。
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ほんとうに けれども彼は
のおべるへいわしょうなんぞ
もってこられたら きっと
冗談はよしてくれと 青ざめて逃げるでしょう
するとシェダルはそれを受けてまた言うのだ
人間は あんなものが欲しいと
まだ思っているんですねえ
(青城澄「シェダル」)