世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

男の殺し方

2018-01-07 04:16:48 | 冬の日差し・夏の月


これはヤエルとシセラですね。女が男のこめかみに釘を打っている。女が男を殺す図のテーマとしては、ユディトが先に浮かびますが、これもよく描かれているようです。

旧約聖書の士師記に出てくるエピソードです。イスラエルとカナンが戦をしていた頃、敗れたカナンの将軍シセラはヤエルという女性の家に逃げこむが、そこでヤエルにこめかみに釘を打たれて殺されるのです。

かくまってくれると思って油断して熟睡していたからだそうだが、人を殺すやり方としては、少々変っていますね。何も釘でこめかみをうたなくとも。本当にそんなことをしようとしたら、途中で男に目を覚まされてしまいます。聖書にあるように、一撃で頭を貫くなんてことは女性の力では無理だ。

同じ理由で、泥酔している男の首を斬るなんてことも、女性の力では無理ですよ。どちらの話も、創作です。作家がおもしろく書いたのでしょう。

男を殺すには、刃物はいりません。色気もいりませんよ。もっといい方法がある。

愛ですべてをやったあと、何もいらないといって、ほほ笑んで死ねばいいのです。

それだけで、男は死ぬのです。いえ、死よりも恐ろしいものが待っている。馬鹿というものです。

女が、いらないというだけで、男がやったすべてのことが、何の意味もない馬鹿になるのです。

怪しいまでに知恵と力をふんだんに発揮して作った、大いなる居城も、命と体をはってやった戦争も、高い文明をうたい上げた国も、男がなしたことが、すべてブタになるのです。

何の意味もない。

なぜならすべては、あの美しい女に、いいと言ってもらうためにやったのですから。

すばらしいことをして、あまりにもいい男だと、あの女に目を見張って見てもらうために、やったことなのですから。

愛に、認めてもらうためにやったことなのですから。

わかるでしょう。あなたがたはその実例を見た。かのじょはあらゆる努力をして救済をした。そして、ほかには何もいらないと言って消えた。

それだけで、人類史がまるごと馬鹿になったのです。

人類の男がやってきたことは、すべて女をだますためだったのだと、あまりにも恥ずかしいブタになってしまったのです。

美しい女とは、恐ろしいものなのだ。あふれるほど嘘をついてでも、欲しいと思うのに、よってきてくれない。あらゆる謀略を尽くして、手にいれようともがいても、まるで追えば追うほど逃げていく月のように、捕まえることができない。

あんな女に負けてたまるかと、男の知恵と力を総動員してやったのに、結局最後まで逃げられる。そして、死なれる。

生き残った男はどうすればいいのか。

これが、死よりも恐ろしい、馬鹿というものです。男は、永遠に、この汚名を着ていきていかねばならないのです。






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