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生産性向上は受注産業から!

2018年11月18日 | コンサルティング

「見込生産産業」と「受注生産産業」(以下、見込産業と受注産業と記します)という言葉があります。たとえば、家電メーカーや出版社は、製品や本がどのくらい売れるのかを予測して製造をするので見込産業です。一方、システム開発会社や印刷会社は顧客からの発注があってから製造をするので受注産業です。

一般的に、見込産業は顧客ニーズを外してしまうと製品が売れなくなるためハイリスク・ハイリターンであり、受注産業は顧客からの注文ありきなのでローリスク・ローリターンであると思われています。

しかし、受注産業のリスクは見込産業を上回ることがあります。

典型的な受注産業であるSI(システム・インテグレータ、よくSIerと呼ばれます)の例を見てみましょう。

SIerは顧客からシステム開発の案件を請け負い、システムを作って納品します。簡単に言えば、顧客が要求する機能を満たす仕組みをプログラムで実現する仕事です。仕事の流れは、受注獲得→要件定義→設計・開発→テスト→納品→保守となります。

これがビルなどの建物ならば、顧客も容易に完成品を想像できます。ですから、どんなにわがままな顧客でも建てている途中に「20階建てを30階建てにしろ」とか「四角いのは止めて円形にしろ」などとは言いません。

ところが、システム開発の場合、建物と違って顧客が全体像を把握することがなかなか難しいのです。開発をしている途中で「ちょっとこういう機能を追加してくれ」とか「このやり方だと処理が遅くなるから違うやり方に変えて」といった無理難題を軽く口にすることがあります。

こういう無茶振りをされた開発者はたまったものではありません。仕方なく「コストが20%アップします」、「納期が大幅に遅れます」と言わざるを得ません。

すると、システム開発の知識がない顧客は「冗談じゃない!プログラムをちょいといじれば済む話だろう。タダでやってくれないと困る!」と憤ることになります。

これは極端な例にしても、仕様がはっきりしなうちに開発が始まったり、開発途中で発注側の担当者が変わって話が通じなくなったりということは、比較的よくあります。

その結果、開発の現場では長時間の残業や徹夜、休日出勤など、社員に極端な負荷・過重労働を強いることになります。社員は強いストレスにさらされるため、うつ病や過労死に至るケースが生じます。こうした状況はSIerに限らず、印刷会社や産業機器メーカーなどでも見られます。

こうしてみると「働き方改革」は受注産業こそ真っ先に取り組むべき課題なのですが、なかなか上手くいきません。その理由は「受注ありき」にあります。つまり「お客様の要求がすべて」という考え方です。発注側である顧客も同じように思っているので、やっかいです。

顧客=発注側が、受注側のプロセスを十分の理解し、発注するときに曖昧な点を極力無くすように心がけるだけでかなり改善できるのですが・・・

国を挙げて「生産性の向上」に取り組むなら、まずは受注産業に焦点を当て、徹底的に無駄を省くアクション(政策も含む)を起こすべきです。

受注産業が変われば日本の生産性は確実に高くなります。

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