イワシの翻訳LOVE

はしくれトランスレータ「イワシ」が、翻訳への愛をつれづれなるままに記します。

何が冗長か、ということを少しだけまじめに考えてみたところ、このような考えにいたりました。

2007年09月21日 23時36分54秒 | 翻訳について
日常世界ではあまり耳にしないが、
翻訳会社に勤めているとよく聞こえてくる言葉として、
「冗長(じょうちょう)」という語がある。
よくわかりそうでわからない言葉ではある。
冗談が長い、というわけではない(が、当たらずと言えども..ではある)。
つまり、語りが無駄に長い。簡潔に言えるところをくどくど言っている、
そういうことである。

「おたくが納品された訳文、ちょっと冗長なんですよね...云々」
みたいなクレームがくるときもあるし、
レビューアーが、ことごとく冗長な表現を許さずに
徹底的に無駄をそぎ落としたミニマリスム翻訳の視点から
アカを入れてくることもある。

たとえば、

×することができます。

と書いてあるのを、すべて一律に

○できます。

に修正してきたりする。

確かにこれはわからんでもない。
というか、まあ妥当とは言える。
でも、必ずしも上の修正が常に正しいとはいえない、
ということができると思われるのである(冗長な表現)。

だって、「"すること"ができる」、と
「できる」は違うでしょう。違うからこそ、言葉は
自然発生的にパラフレーズされているわけなのです。
強いていえば、前者はbe able to で、
後者はcanに近い。
僕個人の感覚ですが。

たとえば、成田空港にいく方法、
というのを人に教えるとき、

「成田エクスプレスに乗って行け」

といえば、一言ですみます。
ものすごく簡潔です。
でも、この一言を、理解できない人もいる。
そういう人は、
成田エクスプレスというものが何で、
それに乗るためにはどうすればよいか、
それを自分で調べなければならない。
時間も食うし、
場合によっては道に迷う。

そう考えると、文章としては長くなってもいいから、
「まず、成田空港に行くためには、いくつか方法がありますが、
その1つとして、成田エクスプレスという電車に乗る、という手が
ございまして、まあだいたいの人は、これに乗って件の空港まで
いくというのがこっちの人間の慣習でございまして...」
とくどくど書いた方が、より「短時間」で、
読み手には情報が伝わるかも知れないのだ。
つまり、後者の方がミニマムな情報を伝えている。

だから、文字や表現が短ければ冗長さを回避できる、
という考えには常には同意できないのである。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Natsume)
2007-09-21 23:48:04
まったくそのとおり...

何か覚えると、まさに、何とかの一つ覚え、みたいに細かい状況の違いを無視して同じことばかり言う人、たくさんいますねえ...
(>_<)

しょうがないです...だって、細かい違いを理解するには、大変な勉強と訓練が要るから...
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Unknown (iwashi)
2007-09-22 00:23:36
ぼくは性格的に天邪鬼+飽きっぽいというのが
あって、どうしてもパラフレーズしたく
なってしまう要求を抑えることができません。
Note that ときたら、~に注意してください。
とは絶対やくしたらんぞ、と意地を張って
しまうというか。
逆に、同じ言葉を違う表現に訳し分けることは
はなからNGと思っている人もいるように
見受けられます。性格の差だとも思うので、
それはそれでいいと思うのですが、
それをすべてにあてはめようとするのは
勘弁願いたいところです(でもいえない)。
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Unknown (Unknown)
2015-01-10 23:52:09
1 することができます。
2 できます。
3 することもできます。

自分の感覚的には、1には違和感ある。
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Unknown (Unknown)
2015-08-18 14:27:10
最近見たバラエティー番組でCM入る直前、
画面の左側に字幕が「はたして、気づくことができるのか。」と出たけど、
短時間なら「気づくか!?」で良いよ。
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