おはようございます。ヒューマン・ギルドの岩井俊憲です。
アドラーの本の紹介の4冊目は、アドラーの1929年の著書『個人心理学講義―生きることの科学』(“The Science of Living”、岸見一郎訳、一光社、1929、1,800円+税)です。
構成は、以下のとおりです。
第1章 個人心理学の原理
第2章 限界を克服すること
第3章 劣等コンプレックスと優越コンプレックス
第4章 ライフ・スタイル
第5章 早期回想
第6章 身体の動きと態度
第7章 夢とその解釈
第8章 教育と問題行動のある子ども
第9章 誤ったライフ・スタイル
第10章 犯罪と共同体感覚の欠如
第11章 恋愛と結婚
第12章 性とセックスの問題
第13章 結論
解説
この目次をご覧になって一部の方はお気づきだと思います。他の本と大きく変わらないのです。
確かに1929年、1930年は、アメリカでアドラーが最人気の頃で、本を出せばそれだけ売れたでしょうが、逆を言えば、「また同じじゃないか」という気持ちも持たせたと受け止めることもできるでしょう。
前にも申し上げたとおり、この当時のアドラーの本は、講義・講演や症例検討会をベースにしたもので、アドラーが机に向かって、推敲を重ねながら書いた本ではないのです。
それだけに重複・散漫さを免れることができないハンディがあります。
それでも、私は、この本の中からアドラーの重要なメッセージを数点探し出し、お伝えしようと思います。
第1は、アドラーの「意識」と「無意識」の解釈について
第2は、アドラーの捉える「正常な人」について
第3は、「劣等コンプレックス」「優越コンプレックス」についてたっぷりと(ただ、これは長いので、次回にします)
第1の「意識」と「無意識」についてアドラーは次のように説いています。
「意識と無意識は同じ方向へと進んでいくのであり、しばしば信じられているように、矛盾するものではありません。その上、意識と無意識を区別するはっきりとした境界線はありません」
第2の「正常な人」とは、
「正常な人とは、社会の中に生きており、その生き方が非常に適応しているので、望もうと望まざるにかかわらず、社会がその人の仕事から何らかの恩恵を受けているような人のことです。心理学的な見地からも、正常な人は、人生の課題(注:ライフ・タスクのこと)と困難がやってきたときに、それに対処するに十分なエネルギーと勇気を持っています」
と、「共同体感覚」をしっかりと身につけ、「ライフ・タスク」に対処する十分なエネルギーと勇気を持った人だと言っています。