今回は井上靖の「星と祭」に出てくる石道寺までです。
雑駁ですが星と祭は、子供を琵琶湖で亡くし、悲しみに暮れる父親の生きざまを描いていますが、途中十一面観音にすがるようになります。この小説では、十一面観音を亡くなった娘にみたてています。
京都奈良の仏像は仏教美術品とすれば、湖北一帯の十一面観音像は明らかに信仰の対象と見る事ができそうです。
井上靖の小説には、鑑真和尚の生涯を描いた「天平の甍」などもあり、この辺りの題材は得意なところでしょうか。
さて、石道寺へは、まず高月から隣の木之本に向かいます。
高月の駅で切符を買ってから気づいたのですが、少し遠いですが高月からも石道寺へ行けます。
切符も買った事なので、そのまま木之本へ。
石道寺へはバスもあるようですが、1時間に1本くらいと聞いてましたので、まずはタクシー乗り場へ。
ところが、タクシー乗り場には、待ちのタクシーはいません。
小さな町なので、必要なら電話で呼び出すようで、待合のところに電話番号が書かれたありました。
待ち時間はそれほどでもありません。連絡してからほぼ10分くらいで来るようです。
滋賀湖北ではあまり紅葉を目にしませんが、石道寺、鶏足寺辺りはどうやら唯一の名所らしきところのようで、この時期には紅葉散策協力として200円を徴収していました。
石道寺は真言宗のお寺のようですが、お寺というよりはやはりお堂といった方がピンとくる、小さな小さなお寺です。
本尊の十一面観音立像はとても穏やかな顔つきで、唇にほんのりと紅が残っています。
衣にも彩色残っていますが、作られた当初を想像すると相当綺麗な観音様のようです。
丈は173cmで、右足親指キュッと上がっているのがとても印象的です。
やはり、井上靖の小説を読んで拝観に来る方も少なくないようですが、白州正子の「かくれ里」にも書かれており、滋賀の隠れた名刹なのかも知れません。