20才の頃、3年間の放浪の旅をした。与論島で2,3カ月過ごし、沖縄から鹿児島へ行く船に乗ることになった。台風が接近しているので、その船が今日の最後だと聞いていた。船は、たぶん500トンぐらいの小さな貨客兼用船だ。
まだ明かるかったが、出港まで時間があったので、夕飯にビールと何かを腹一杯食べたのだ。
乗船すると、うす暗い船底の2等船室は私達若者で満室。椅子はなく、枕と毛布が用意されていた。偶然隣同士になった姉妹と寝転がりながら、旅の話がはずみ楽しい気分だった。
船が出港し外洋に出ると、台風の影響でものすごい波だった。だから船は、まるでエレベーターに乗っているように昇降するのだ。その落差は、たぶん5メートルはあるだろうと思われた。下降するときは床から体が離れて浮くような感じだったし、上昇する時はぐっと床に押し付けられるような感じなのだ。
外洋に出て、たぶん30分以内だろう。私は一変に気持ち悪くなり、トイレに駆け込んだ。そして、ついさっき腹一杯食べて飲んだものを全て吐き出したのだ。船室に戻ると、「大丈夫?」と姉妹の姉から声を掛けられたが、一切話す気力が失せていた。
ススキ(芒、薄)