風の音窓打つ雨も師走かな 稱子
年用意母真似ていて母遠し
包丁の其の先ほどの寒さかな 遊石
その人は一つの咳の様に消えた
黄落のじゅうたんめくる竹ぼうき 洋子
窯出しや上がる歓声朴落葉
世に飽いてゐる寒月を愛でてゐる 章子
マフラーの中よりひそと君を呼ぶ
ハイヒールのつんつん歩く紙マスク 薪
秋鯖の刺青の胴押してみる
万物に隙ありにけり虎落笛 炎火
山枯るる観音堂の露かな
虎落笛揺れし立木の長き影 鼓夢
野ざらしの寄生木痩せて冬の天
病得て空白のまま古暦 豊春
大根抜く妻の背中を夕日影
さし伸べる掌に冬虫のあとずさり 正太
風呂吹や友は昔の恋がたき
癩の惨秘めて静まる冬木立 侠心
古暦捨てて来福希わんか
アイビーに紅葉銀杏が舞い落ちる 空白
ホームレスは見て見ぬふりの廃棄物
初雪や窯の余熱はこころにも 雲水
古暦今日も予定がない私