先日、三重県鳥羽で開かれた「海ごみサミット鳥羽会議」に出席しました。海ゴミ問題はまだまだマイナーだけれど深刻な環境問題のひとつです。
海ゴミは大別して次の3種類に分かれます。
1:海面近くを漂う漂流ゴミ。
2:そいつが海岸に流れ着いた漂着ゴミ
3:海底に沈んだゴミ(冷蔵庫や車など大物が多い)。
プラス、真夏の海水浴客などがその場で捨てていったやつも加えることができるでしょう(毎年夏、ブログに書いて怒ってるやつ)。そう、間接的に捨てられたやつもダイレクトに捨てられたやつも、同じ海ゴミってわけです。
以前のブログにも書きましたが、すべての水が最終的には海に行きつくように、多くのゴミも雨水などに流され最終的には海にたどり着き、悠久の大海原を旅し、いずれ海底に沈み、あるいは海岸に打ち寄せられます。たとえば道端にポイと捨てられたタバコも、雨が降り側溝に流れ落ち川を伝って最後には海へとたどり着きます。そうしてチリも積もれば山となった全世界60億人分のゴミ、こいつは意外にも知られていないけれど、すでにその数や想像の領域をはるかに超えておびただしいことになっている現実があります。誰も入っていくことのできない海岸線にすんなりアプローチできるぼくらシーカヤッカーは特に痛感していますが、海流や潮流の影響によって、えげつないほどゴミがたまりまくっている海岸線が全国、全世界たくさんあります。そして海はひとつに繋がっていますので、どんな辺境、僻地に行っても漂着ゴミはまるで逃げ切れない地獄の猟犬のようにどこまでも嫌らしくつきまとってきます。世界の海ゴミ量はすでに誰かが拾ってなんとかなる領域をはるかに超えていて、また拾っても拾っても毎日毎日新たに海にたどり着くゴミの方が多いわけですから、抜本的な解決について考えると絶望感が漂ってきます。
しかしそこを少しでも何とかしようとアクションを起こしている人たちもいるわけで、たとえば散乱ゴミの調査やクリーンアップを通じて海や川の環境保全を行っている「JEAN/クリーンアップ全国事務局」という非営利の環境NGO団体があります。で、このJEANの関連する活動のひとつとして全国各地で展開されるビーチクリーンキャンペーンなどは、なかなか有意義かつ面白いです。
たとえば上で言ったようにただ単にゴミを拾う行為だけでは散発的かつ孤立していてどうしようもない現実があるわけですが、ゴミを拾う際に何人かのグループに分かれて役割を分担し、どんなゴミがいくつあったのかを全世界統一フォームの調査用紙に記していくという手法があります。こいつは一見どうってことなさそうですし、第一ただ拾うよりもめんどくさい作業ですけれど、そうすることによって場所ごとにどんなゴミが多いのかその傾向が分かりますし、そのデータをJEANが集め、さらに全世界のゴミのデータを集めているアメリカの環境NGO「オーシャン・コンサーバンシー」に提出・集積されることによってより貴重な分析データと化するわけです。たとえば湯浅湾でそれを行ったとすると、世界の中の日本、日本の中の紀伊半島、紀伊半島の中の湯浅湾・・・、という感じで世界の中の繋がりとして傾向がわかりますし、また何よりゴミの発生原因をつきつめていくことができます。発生原因がわかれば対策を立てることができるわけで、とにもかくにも問題解決の道はそこから始まっていくわけです。
ま、実際かなり難しい問題なんですが、単純に、この統一フォームに則ってビーチクリーンするといろんな発見があって面白いです。「ほう、こんなものもあるのか」とか「こういうゴミが多いってことは世の中こういう流れにあるんだな」とか、理科の実験や社会の課外学習などにも通じる面白みがあります。海と自然と人間社会との諸々の関係性がより立体的に分かってくる感じとでも言いましょうか。それはただ機械的に掃除するだけではまず分からないことです。そしてみんな同じ作業をすることによっていろんな人と不思議な感じで仲良くなれるというよさもありますね。ほら、大の大人が海に落ちているものの種類を言いあってどうこうするなんてシーンは日常世界ではまずないわけじゃないですか? その中に、えも言われぬおかしみ、ほのぼのとした温かさが感じられ、意外性ある味わいがにじみでてくるわけです。実際、不思議な連帯感みたいなものが芽生えますね。そうして、こんなクソッタレの海ゴミの山を逆手に取っていろんな人たちと繋がっていくのは面白いし、それでこそ世界中ひとつに繋がった海のスピリットのなせるわざと言えるのではないでしょうか。
ちなみにアイランドストリームでビーチクリーンを行った時の模様はこのブログの下の過去記事で参照できますので興味ある方はどうぞ。 http://blog.goo.ne.jp/islandstream/d/20080401
http://blog.goo.ne.jp/islandstream/d/20080402
と、かなり前置きが長くなったけれど、このシンポジウムは上記のJEANが主催したもので、この日は環境省などのお役人さんや大学教授、市会議員などがパネリストとして集まっていろいろ討議が繰り返されました。正直、ちょっと堅苦しいなあと思いましたが、クリーンアップキャンペーンによって各地のゴミデータを集められ分析されたのち、最終的には法律での規制の問題になってくるし、国境すらまだがった政治的な問題にもなってくるわけなので、勉強になる部分、考えさせられる部分が非常に多かったです。そして夜の懇親会でかなりいろんな人と知り合いになれたのが何よりよかった。また、開催地の鳥羽市はすごく意識が進んでいて正直うらやましく思いました。
↑ うちの湯浅湾の鷹島という無人島のゴミ。このゴミをなんとかしたいんだけど、地元漁師の「余計なことすんな」という反発もあってなかなか難しいところが悩みのタネ。
↑ 会場に飾ってあった鳥羽の地元の小学生が作った漂着ゴミアートがかわいくてよかった。
↑ ペットボトルのサメ。
↑ これは歯のないワニと書かれた作品。
↑ 人魚。これは大人の作品
↑ これは伊勢のとあるところにある看板だが、海辺にポイポイダイレクトに捨てていく輩に対して結構有効そうな看板。よくある「ゴミはすべて持ち帰りましょう」とかそういう文面は、本当に捨てていく奴に対して全然効果ないんだよね。