先日、当店アイランドストリームで映画「ザ・トゥルー・コスト~ファストファッション 真の代償」上映会を開催しました。
一言で言うと、ものすごくリアルでショッキングな、つまり包み隠さず本質をえぐった本物のドキュメンタリー。鑑賞された方も皆、かなり考えさせられるところがあったようでした。というか価値観が根底から揺さぶられる作品だったと言えるでしょう。
この映画、すごい。
そしてとてもわかりやすい。
http://islandstream.la.coocan.jp/truecost.html(上映会詳細情報)
たとえば昔と比べて昨今、Tシャツでもジャケットでもパンツでもすごく安い服が世の中に出回ってるじゃないですか。まあそれは「人件費やコストの低い途上国で作られてるからだ」、ということくらいはみんな知っていると思う。だけどその製造現場の実態はほぼ誰も知らない。
で、この映画では、その実態、特に労働者の悲惨な生活を包み隠さず描いているわけ。そしてその元凶であるZARAとかH&Mとかモンサント(原料のコットン供給)とか、大企業を名指しで徹底批判している。
これ見たら、服もそうだけど消費シーンにおいて「安物」、そして使い捨てってのは悪そのものだということがよくわかるよ。
現在最も服の製造コストが安い国のひとつはバングラデッシュだけど、そこでの労働者の日当はおよそ2ドルだ。縫製工場はどこも亀裂の入った今にも崩れそうなボロボロの老朽ビルで、数年前には工場そのものが崩壊して1000人ほどの労働者が亡くなった事故があった。で、この映画では生き埋めになった人の写真や映像、遺族のインタビューを映し出すことによって、問題点のリアルさが浮き彫りになっている。
また、カンボジアの縫製工場では従業員が「せめて月給を160ドルにあげてください」とプノンペンの町中でデモをした際、警察の鎮圧部隊が襲いかかってきて銃撃してくるシーンが映し出されるが、これ、下手したらカメラマンが撃たれるぜってくらい生で迫っている。そして撃たれた一人の従業員が血を流しながら死んでゆくシーン、また涙を流しながら悔しさを述べる人々の姿も実録されている。
実はファストファッションの大企業とカンボジア政府が結託し、他国に受注が逃げないようカンボジア政府が労働者の賃金を低いままに抑えつけているのである。
インドでは服の原料のコットン畑が映し出されるが、そこではモンサント社の遺伝子組み換え種子を使うよう農民は縛りつけされている。その種子は以前の種の170倍ほどの値段の高価なモノで、しかも農薬を大量に使用しなければちゃんと生育しない種なので、農民は種子代と農薬代とのダブルパンチで借金漬けになっている。首が回らなくなり自殺する貧農が後を絶たず、実際この16年間に25万人が自殺している。
人類史上、最も高い自殺率の職業だ。
かつ、多量の農薬散布により奇病やがんが増えている。
服飾の製造工程って、石油産業に次ぐ2番目に最悪な環境破壊の元凶だとも言われている。
インドにも服飾工場や靴の皮革工場があるが、インドでは環境規制がきわめて緩いので汚染物質をそのまま川に垂れ流す。インドって実際、川がもう想像を絶するほど超絶的に汚いんだけど、何億人もの貧乏人はそこで洗濯し、排泄し、そしてその水で煮炊きし、飲料水にまでしている。
もちろん病気になる。
この映画ではその病人までもを映し出している。
この映画がリアルでショッキングだというのは、もちろんグロテスク趣味ということではなく、ぬるま湯に浸かった高度消費社会の消費者には、これくらいリアルな本質を突きつけないと身につまされないということなのだろう。というかこれが現実そのものなのだ。監督のそのジャーナリズム精神、パッションが痛く胸に伝わってくる。
最後の方のシーンでは、デパートのバーゲンセールにて猛ダッシュで商品棚に走って行く先進国の消費者と底辺の暮らしでうちひしがれる途上国の人の顔が対比して映し出されるが、これほど痛烈な皮肉はないと思うと同時に、「確かにこのシーンは必須だな」と思う。
ではどうすればこの問題を解決できるか?
事はそう簡単ではないけれど、今一度消費ということについて考える、購買する際の意識について考え直すところからしか結局変わっていかないだろう事を示唆して映画は終わるが、実際、価値観そのものが根底から揺さぶられる作品だ。