(八重山カヤックトリップの続き記事です)
川平湾に続いてカヤックを漕いだのは島の北東部の半島でした。石垣島の中でも最も人の少ないエリアで、特に半島の東海岸は道が通じていないので、全くの無人の海岸線を漕ぐことになります。つまり野趣、野性味を重んじるカヤッカー的には、石垣島におけるハイライト・エリアとなるわけです。上の写真は、玉取崎の展望台から眺めたその海岸線の風景です。沖のほうに見える白い筋がリーフのラインで、例によって北風が強い雨交じりのひどいコンディションでしたが、リーフの内側は波立たず、十分漕げる状況でした。
↑ 出艇場所。伊原間(いばるま)という地名の土地に、「船越」という場所があり、道端には駐車できるスペースがあります。で、道向かいの民宿・船越のそばからこの浜に入っていく小道が通じています。こういうバックパック型のカヤックトリップにおいて「出艇場所」というのはかなり重要な要素になってくるわけですが、だいたいはパッパっと「カン」で決めます。ここは石垣島到着初日にレンタカーでグルーっと島を一周した際に地図と照らしあわせて、「多分ここが一番いいだろうな」と目をつけておいた場所。
↑それにしても、荒天続きでした。本当はこのエリア、もうカーンと晴れると、ありえないほど鮮やかなブルーの南国風景が展開される場所のはずなのですが、重い乱層雲が立ち込め、こういう陰鬱な感じになっていました。ですが、雨降りの海上は、ぼく的には嫌いではないんですよね。
↑ 道が通じていない海岸線なので人はぜんぜんいないですが、放牧された牛はたくさんいます。これがいわゆる石垣牛です。あくまで個人的な意見ですが、柔らかい肉のためにビールなんかを飲ませてもらい、マッサージまでしてもらう神戸牛や松阪牛の霜降り肉なんてどこか気色悪い感じがしちゃいますが、こんな場所でおおらかに勝手に育つ牛の肉は、なんといいますか、正しい牛肉という感じがします。石垣牛の焼肉も食べましたが、非常においしかったです。石垣牛の闘牛も見ましたが、非常に感動しました。
↑ カヤックでかなりギリギリまで近寄りました。こちらを意識して群れが動き出し、「モーモー」とうなり声を上げ始めました。ぼくも「モーモー」とうなり返すと、なんだこいつはという表情で背中を向け、「シッシ」という感じでシッポを振り、歩き去っていきました。
↑ 山に乱層雲が垂れ込め、全くの無人の海岸線というシチュエーションもあいまって、あたりは一層の神秘的な様相を呈し始めました。こういうところを一人で漕ぐ、というのは非常にリッチな体験だと思います。ぼくは色んな人と漕ぐのも好きだけど、このシチュエーションでグループで漕いでいたとするとただただ、「天気悪いねえ~」で終わってしまいます。逆に一人で漕ぐといわゆる濃密な、「自然との対話」ってやつになるのです。
↑ いつの間にか乱層雲が山全体を覆った。ゆっくり形を変化させてゆく霧のような雲の流れに、グレートな自然の鼓動を感じたのだった。太平洋上に浮かぶ小島としての、黒潮という巨大海流の中に浮かぶ小島としての息吹を感じた。上昇気流が雲を呼び、雨を降らせ、森を潤し、川に流れ、再び海に帰ってゆくという、水の惑星の循環を感じた。そしてそんなことを感じることができるのは、カヤックという敏感な宇宙船に乗っているからなのだった。
↑ この雲のなびき方もいいね。非常にいい。
↑ これも非常にいい。女性的なタッチの丸みある山の連なりと、立ち込める水蒸気、なんというか品格が感じられた。
↑ 海岸線はずーーと砂浜海岸が続いていて、キャンプするにも素晴らしいだろうと思った。
↑ この荒涼、寂寥とした風景、ハートにヒビが入りそうなくらいキューンときてしまいました。
↑ 風に揺れるアダンの群落。アダンは実がパイナップルみたいな(実は食べられない)、南国風情たっぷりの植物。風に敏感に感応したような葉っぱのタッチもいい。
↑ 石垣島北東部の海岸は、野趣、野性味に溢れていて、 よかった。